雅楽の篳篥(ひちりき)の最良のリード
鵜殿(うどの)のヨシを次の世代へ繋(つな)げよう

  鵜殿(うどの)ヨシ原を横断する新名神高速道路・八幡~高槻間は2023年完成を目指しての事業が始まりました。
平安時代から1000年以上受継がれてきた篳篥のリードの最良の材料であるヨシを私達の世代で潰させてしまってよいのでしょうか。


鵜殿のヨシを守るため あなたの疑問に答えます。



Q-1 篳篥のリードは、ヨシでできているのですか

A-1 はい、そうです。雅楽の篳篥のリードは、川のほとりに生育するヨシで作ります。
材料となるヨシにもいろいろな材質があり、鵜殿(大阪 淀川河川敷)で採取するヨシが最適で、平安時代の古くから使われています。

Q-2 なぜ鵜殿のヨシは最適とされるのですか

A-2 篳篥の名手である東儀俊美氏、東儀兼彦氏(共に元宮内庁楽部首席楽長)は全国を歩いてヨシを調べた結果、「いろいろな所のヨシを試したが、鵜殿のヨシより良い品質のヨシはありませんでした。
明治時代宮内省に「鵜殿のヨシの刈り取り願い」の記録があり、鵜殿のヨシが一番良いということは先人が一番良く知っているとの思いを新たにしました。」と鵜殿のヨシが最良であると語っています。
なぜ鵜殿のヨシだけが篳篥のリード(蘆舌)に適しているかというと、他のところのヨシと異なり、鵜殿のヨシは背が高く太いというサイズの違いの他、適度な厚みがあり弾力に富み割れにくいということが大きな要素です。
また鵜殿に生えているヨシならどれでも篳篥のリードに適している訳ではありません。鵜殿の中でもごく限られた場所の中の何百・何千本に一本なのです。良質のヨシは、導管や師管などの空洞が少なく組織が密で均一であることが分ります。(上写真)
何万本の中からリードに適した良質のヨシを選んで篳篥の奏者が使っています。世界中の篳篥奏者が鵜殿のヨシを使いますので、まだまだリードに適した鵜殿のヨシの本数は足らないとのことです。

Q-3 鵜殿のヨシ原 はどこにあるのですか


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A-3 場所は大阪府高槻市上牧町と道鵜町付近の淀川河川敷です。
最寄りの駅は阪急電鉄京都線の上牧駅です。新大阪からでも京都からでも最寄りの上牧駅までは約30分です。
大阪、京都、奈良からほぼ等距離にあり、江戸時代は1日で鵜  殿を往復しヨシを採っていました。

Q-4 鵜殿ヨシ原の広さは どのくらいですか。

A-4 淀川の河川敷ですので、川に沿って長さ約2.5㎞ 最大幅が約400mです。端から端まで土手沿いに歩くと約30分です。広さは75ha、約22万6000坪で甲子園球場18個分。皇居の約半分の広さで、明治神宮の神苑(22万坪)とほぼ同じ面積です。広いといえば広いですが雅楽に使えるヨシがここだけでしか採れないと思うととても狭い地域です。

Q-5 高速道路はどこを通るのですか

 A-5 鵜殿ヨシ原を横断する新名神高速道路・八幡~高槻間は2023年完成を目指しての事業が始まりました。
この八幡~高槻間は工事が凍結されていましたが、2012年4月20日に凍結解除となり動き始めたのです。
現在の計画ですと高速道路が通る地域は、鵜殿ヨシ原の上流部分、今でも篳篥のリードに最適なヨシが育つところを通ります。宮内庁に納められるヨシはこの地域で育成されています。
 

Q-6 もし工事が始まるとどうなるのですか。

 A-6 まずは、工事車両を通す道路を造るでしょう。道路を造るだけでヨシは全滅してしまいます。
というのは、ヨシは水が無いと育ちません。ヨシ原の再生のために1998年から淀川からポンプで水を汲み上げてヨシ原に水路を作り水を流しています。この水によって再生しました。水は上から下に流れますから当然上流側から流しています。良いヨシの育つ場所は水分条件の良い場所です。水路の上流部分が工事現場になりますから、このヨシ原を潰すことになります。
工事開始からヨシの生育への打撃は相当に大きいものです。と同時にポンプで汲み上げている水も止めることになるでしょう。
水が来なくなったヨシ原は今までも進行する土壌の乾燥化が進み、乾燥に強い陸地性の植物、つる草(カナムグラ、アレチウリ)などが生い茂り、ヨシは全滅を待つばかりとなります。

Q-7 それ以外のところでヨシは育つのでは?

 A-7 ところがそうはいかないのです。ヨシ原焼きを毎年行わないとヨシの絶滅へと続くのです。しかし、ヨシ原焼きは煙が多く立ち昇り遠くまでたなびきます。
高速道路の下でヨシ原焼きを行ったとしたら、煙が充満し車の通行はとても危険となります。
ですから通行止めにするか、ヨシ原焼きを止めるかどちらかとなりますが、文化の保存継承よりも経済優先で作られる高速道路ですから、文化のために交通止めは考えられません。となるとヨシ原焼きができなくなるのです。
なぜヨシ原焼きを行わないといけないかと云うと、ヨシを冬に立ち枯れさせたままにしておくと、陽当たりが大変悪くなりヨシに害を及ぼす昆虫が増え、ヨシに繁殖する菌類も増えていきます。
ヨシの質は毎年悪くなります。ヨシは減り続け、毎年のヨシ原焼きによってヨシ原の自然が維持される乾燥に強いつる植物などが増えヨシの絶滅となります。
例え水が充分に調節できていたとしても、ヨシ原焼きを行わないとヨシは絶滅へと続くのです。
鵜殿ヨシ原を横断する高速道路は、水の問題、ヨシ原焼きの問題以外にも騒音、排気ガス、車の照明など簡単に考えただけでも鵜殿の環境は激変し、歴史的景観がなくなるだけでなく、工事が始まった時には、それだけで壊滅状態に陥り、絶滅危惧種のオオタカのほかハヤブサ、カワセミ、キジ、ツバメ、カルガモなどの鳥たち、そしてタヌキやキツネなどの哺乳類、ミツバチやバッタ、蝶などの昆虫類、そして数え切れない希少な植物たちも環境の激変によって絶滅が危惧されます。

Q-8 高速道路の工事を変更させたりできるのですか

 A-8 私たちは、新名神高速道路の見直しを求めているのではなく、鵜殿のヨシ原の自然環境を守っていきたいということです。経済効率を求めるだけでなく、歴史的な文化遺産、芸術を生み出す材料を保存し継承していくことも必要だということを求めています。
現在の日本の技術からすれば、鵜殿ヨシ原に手を付けずにも問題を解決する道はあるはずと思います。
鵜殿ヨシ原の環境を全く変えない方法はいろいろ考えられます。
一度壊してしまったものは、帰ってきません。甦(よみがえ)らせることはできないのです。平安時代から1000年以上受継がれてきたヨシを私達の世代で潰させてしまってよいのでしょうか。
1000年以上前から口から口へ、人から人に?がり伝えられ今にある雅楽。次の世代に良質のヨシひとつ残せないなんて悲しいことです。国民の財産である鵜殿のヨシ、日本の雅楽は世界無形文化遺産であり世界に誇る文化と芸術です。鵜殿のヨシがそれを支えてきました。ヨシを守らなければ雅楽を守ることはできません。
文化を守ってきたのが日本人だったではありませんか。庶民の文化も、武士の文化も、貴族の文化も、お互いが尊重しながらお互いが支えあいながら伝えてきたのが日本の文化であり、芸術でした。
日本は経済だけを追い求めてきたわけではありません。文化や芸術を大切にする、それが日本の文化でした。ですから鵜殿のヨシを守ることができるのです。

Q-9 今後どのようなことを行う予定ですか。

  A-9 鵜殿のヨシ原を守っていくために必要なことがあれば、それを行っていくことだと思います。今まで、鵜殿のヨシを守る「声明」が各方面から出されました。これからも「声明」は出されると思います。
現在は署名も始まりました。これからは考えられるいろいろな方法で、鵜殿のヨシを守る声をさらに広げ、鵜殿のヨシとそこで生活する動物や植物などの命も守るよう働きかけていきたいと思っています。
是非皆様のご協力をお願いいたします。雅楽協議会へご連絡ください。 (連絡先1面下)

Q-10 小山弘道氏、鵜殿ヨシ原研究所、鵜殿クラブについて

A-10 鵜殿ヨシ原で、篳篥用のヨシが現在のように蘇ったのは、鵜殿ヨシ原でヨシの保全に40年余りにわたり取り組んでこられた鵜殿ヨシ原研究所所長の小山弘道氏のおかげといっても過言ではありません。
植物生態学の研究者である小山氏は、1975年から鵜殿の自然調査を始め観察会などのヨシ原の保全活動を市民参加で行われ、また国交省に揚水ポンプの設置や水路を提案し、自然環境改善、篳篥のヨシの育成の要望や活動を現在も継続して行われています。
鵜殿ヨシ原研究所・鵜殿クラブでは、鵜殿の説明や案内を行い、雅楽の音を支える鵜殿の重要性やヨシ原の危機を広く伝えようと2000年から雅楽コンサートや講演会や展示会なども開催しています。
詳しくは「鵜殿通信」が発行されていますのでご講読をお勧めします。問合せ・申込は下記へ。
うどののヨシ原、鵜殿ヨシ原研究所

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