振り返ってみても篳篥用ヨシが激減していることが判ります。何年も前から言われていますが、何とか対応していかないとこのヨシ原から篳篥用ヨシは採れなくなってしまうでしょう。
ではどうすれば良いか、そこで再度確認しておきたいのが、淀川環境委員会の報告、新名神高速道路建設のNEXCO西日本「検討会」の『報告書』、そして小幡谷英一氏「蘆舌用葦材の物性」に書かれた研究報告、この3つの研究から共通して書かれていることから今後の対応が見えてくるように思います。
その第1は、篳篥用ヨシは水に浸らない乾いた土地(陸域)に生育するという事でした。ヨシを増やすだけでしたら水を増やせばヨシは増えますが、水に浸かっていたりその水辺(水域)のヨシは篳篥用ヨシには使えないという事です。水を増やせばヨシは増えますが、そのヨシは、どう頑張っても篳篥用ヨシには使えないのでした。導水路を増やしたり、水量を増やすとその分、篳篥用のヨシは無くなってしまうのでした。篳篥用ヨシを守ることと、ヨシ一般を守ることとは全く別の対応をしなければいけないという事です。上牧・鵜殿ヨシ原は、篳篥用ヨシを守ることを最優先したヨシ原だと思います。
その第2は、第1の点を踏まえた上で、篳篥用のヨシの生育する乾いたエリアでは、つる草や雑草がヨシよりも早くに成長したり、つる草がヨシにからまり付いてヨシを倒したりするのは、仕方のないことで、つる草や雑草が侵入したり生い茂ったりするのを防ぐ努力をしないといけないということでした。
つる草や雑草を退治するために水を引いたら篳篥用ヨシは生育しないので、水を利用してつる草を退治したりする方法はとれない。あくまで乾燥した(陸域)のエリアを守りながらつる草や雑草を除去していかないといけないということ。
その第3は、「ヨシは竹と同様で、非常に繁殖力が強い」ということです。地下茎で地上から2メートル余り地下に根があるそうです。ですからつる草や雑草を除去してあげれば篳篥用のヨシは再生するはずです。
以上の事から、つる草や雑草を取り除くための方法を確立すれば、篳篥用ヨシの生育範囲を広げていくことはできそうです。1千年以上伝えられて来た雅楽、篳篥のヨシです。これからも未来に向けて篳篥用ヨシの保存と再生をいろいろな方々と協力しあいながら進めていければと願っています。
(以上)