篳篥用ヨシの復活を目指して

 地元の方々の取組に協力を

品質は昨年より悪い・本数も少ない篳篥用ヨシ

上牧実行組合の木村和男さんに、3月4日ヨシ原を案内していただきながら今年採取の篳篥用ヨシの状況をお聞きしました。

木村さんは、今年のヨシの出来栄えについて「今年採ったヨシは、台風の影響を受けてヨシの穂が飛ばされたヨシが多く、また風の影響で1m50㎝~80㎝ぐらいのところで曲がってしまっている。さらにシミがあったりしていて良いヨシを選ぶのに時間がかかりました。品質は昨年度より悪いです。篳篥用ヨシが採れる場所に雑草が覆いヨシの成長を妨げてもいて、採れる場所が昨年より狭かった。ですから今年のヨシは、全体的には品質は昨年より悪く、採れる本数も少なかった」という。

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上牧・鵜殿ヨシ原のヨシ原焼きは、予定より1週間早めて2019年2月17日行われました。ヨシが乾燥していて良く燃えたそうです。   写真 木村和男氏

このままでは、ヨシが絶えてしまうと地元の関係者は本当に危機感をもつている

今までも「篳篥用ヨシが絶えてしまう。」と語られてきましたが、「もう、話だけしている時期は終わった。本当に何か手を打たないと」と地元の方々は、今年のヨシの状況を見て、本当に絶えてしまうという危機感を募らせているのがひしひしと感じられました。

篳篥用ヨシの復活を目指して取り組み始まる

地元では、1月28日に篳篥用ヨシの復活を目指して河川財団(公益財団法人)を中心にして上牧実行組合、鵜殿のヨシ原保存会、高槻市、植物専門の研究者を交えて情報交換会が開催されました。

その中で篳篥用ヨシの復活のため、今後の取組として次の案が実行に移されることになりました。

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2月17日のヨシ原焼きの後を見ながら、上牧実行組合の木村さんは「今年は篳篥用ヨシの採れるところがずっと減った。質も落ちた。このままではアカン」と語る。3月4日

つる草など雑草の退治へ木材のチップを敷く

⑴つる草などの雑草駆除として、木材のチップをまずは試験的今年の3月からに5m四方に約20㎝の厚みで敷く。

この方法は、雑草の種に太陽の光が当たるのを遮断して雑草の生育を妨げる試みで、ヨシの地下茎は地下2m余のところにあるので、厚さ20㎝ほどの木材のチップは、ヨシの生育には影響を与えないという。雑草だけ生えるのを抑えられるはずで、つる草や雑草を減らせればヨシの生育環境を良くすることが出来る。

これが上手くいけば来年は木材のチップを敷く面積を広げていく予定とのこと。

つる草など全部刈り取り雑草の種を腐らせる

⑵つる草や雑草を駆除するもう一つの方法は、木村さんが「雅楽だより」1月号でも提案されていた方法で、8月末を目途につる草などの雑草に覆われた場所を、ヨシも含めて全部刈り取り、刈り取ったつる草や雑草やヨシを乾燥させて地面を覆う。そして太陽の光を遮断して種を腐らせ、つる草や雑草を退治しようとする方法です。

この方法が上手くいけば、刈り取る所を増やしていくという。

オギを減らす

⑶ヨシ原にオギが増えてきているので、オギを減らすための対策として、地表50㎝位を掘り起こしてオギの根を根絶する。

オギは乾燥に強い植物なので、乾燥が進むとオギが増えていく。オギの根は地表50㎝ぐらいのところにあり、その部分をはぎ取りオギの根だけを取り除くというものです。

ヨシの地下茎は約2mと深い所にあるのでオギの根だけを退治することが出来る。

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木材のチップを20㎝程の厚みに敷き、つる草雑草などの種に太陽の光を遮断し、生育を妨げる。ヨシの生育に影響はない。

横に「淀川河川事務所 調査中」の看板が立てられている。

篳篥用ヨシの復活を目指して

木村さんは「今までも、このままではアカンと言っていたが、今年のヨシは昨年より悪い。ただアカンと言っているだけでは、本当に数年で篳篥用ヨシは絶滅してしまう。地元の関係者はみんな感じています。

そこで、篳篥用ヨシの復活に向けて出来ることは何でもしましょうとなりました。

河川財団とも昨年までは話をしているだけでしたが、今年は、具体的に動くこととなりました。それだけ危機的状況になっているということです」と話します。

雅楽関係者もみんなで協力しましょう

篳篥用のヨシは、世界中探してもここにしか生育していません。昔から上牧・鵜殿ヨシ原のヨシを使用しています。

他のヨシ原のヨシを試した方も多いと思いますが、やはり上牧・鵜殿ヨシ原のヨシが良いと、篳篥奏者は全員ここのヨシを使用しています。もし、このヨシが絶滅し、千年以上の雅楽の音色が私たちの世代で途切れたとしたらと想像すると、恐ろしいという思いだけが去来します。

地元の方々が、知恵と労力を惜しまず篳篥用ヨシの復活に全力をあげて取り組まれています。

雅楽に係わる私たちは、地元の方々の取組に心から感謝するとともに、この取り組みが実を結び、篳篥用ヨシが復活していくことを願い、全力で協力していきたいと思います。

雅楽関係者の皆様のご協力をよろしくお願いいたします。

 

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橋脚建設工事の状況を説明するNEXCO西日本の職員。
2019年3月4日 NEXCO事務所にて

高速道路建設  基礎工事が進む

名神高速道路の建設は橋脚部分の基礎工事(橋脚建設のための杭を打ち込む工事)が進められています。地下の地盤の固いところもあり、工事の進み具合は未定とのことで、この工事は当面続く模様です。なお、6月から10月15日までは台風や洪水も予想されるので建設工事はお休みとなります。

(鈴木治夫)