(1)1971年の淀川河川工事により篳篥用ヨシの質が低下し始めた

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まず篳篥用ヨシの質の低下はいつ頃から始まっているのかについて、元宮内庁楽部首席楽長東儀兼彦先生は2006年に「蘆の質が悪くなり、燻さなくては使い物にならないのではないかと話すことが多くなりました。・・・品質の悪くなった蘆を見ては、淀川も河川工事で蘆が駄目になったのかと嘆いておりました。また琵琶湖の蘆、・茨城県瓜連の蘆・また利根川の蘆と試しましたが、やはり淀川の蘆に叶う品質ではありませんでした。」と書いています。宮内庁楽部の中でも20年以上前にはヨシの質が悪くなっていることが話題になり、何か対応がないかと案じられていたことが判ります。(2006年「鵜殿を思う」鵜殿クラブ会報、及び「雅楽だより」15号2008年10月号より)

東儀兼彦先生の話す淀川の河川改修工事とは、淀川の川底を3~4m掘り下げ、かつ低水路幅(平常時に水の流れている部分の幅)を120m程だったものを300mに拡幅する1971年から始まる大工事で、これにより上牧・鵜殿のヨシ原の水面も3~4m下がり、ヨシ原と淀川の水面の高低差3.5mが7m余りとなり、ヨシ原の環境が大きく変わっていきました。この頃から篳篥用蘆舌のヨシの材質が悪くなっていったようです。

たしかに国土交通省淀川河川事務所淀川環境委員会の資料によりましてもそのことがはっきりと数字で表されています。1971年の淀川の河川工事前は、鵜殿ヨシ原の河川敷の80%がヨシ原だったが、1974年にはヨシ原は20%に激減し、さらに1982年には5%とまで減り続けたと記しています。2014年は導水路などによって17%となったと記しています。(2018年の資料が無いので不明ですが、つる草や雑草などが増えて、また一桁台になってしまっているのではないかと思われます)

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