『ヨシ原通信』No.128 2022年12月23日(金)

◆─◆◇◆◇◆◇◆◇◆───
『ヨシ原通信』No.128 2022年12月23日(金)
発行 雅楽協議会 ヨシ対策室(担当 鈴木治夫)

image001

 

 

 

 

 

 

篳篥を吹く源博雅(『陰陽師 玉手匣 2』より)
ⓒReiko Okano
──ー◆◇◆◇◆◇◆◇─◆─

[1]堤防の上の石碑から『雅遊漫録』について
[2]来年のヨシ原焼きと東儀秀樹ミニコンサート
[3]『ヨシ原通信』バックナンバー
[4]寄付のお願い
[5]問合せ先

▼────────────────

[1] 堤防の上の石碑から 『雅遊漫録』について

上牧・鵜殿ヨシ原の堤防の上に明8年(1875)に始まる淀川改修100周年を記念して1975年に建てられた石碑が建っています。
その碑の中に篳篥に関連して『雅遊漫録』からの引用が刻まれています。

image003

写真 上牧・鵜殿ヨシ原の堤防に建立の石碑など

image005

写真 篳篥について刻まれている碑

この四角の石碑の4行目から9行目には「古書雅遊漫録にも、「簧(シタ)はよしにて作る津の國鵜戸野村の蘆を重寶とす、その外のものは早く損じ音もあしし古く久しく枯らして作る 家々にいろいろの習あり」とある。」と刻まれています。

ここに刻まれた『雅遊漫録』を調べてみますと、この本は和綴じ7冊で江戸時代、宝暦13年(1763年)香道家で煎茶家の大枝流芳(おおえだりゅうほう)が出版したもので、書や香の道具、織物の図柄から楽器の紹介、そして紐の結び方まで日常の百科事典のような書物で楽器の項では、篳篥の他 笙や笛、琴、箏、琵琶、三鼓(太皷、鞨皷、鉦皷)、洞笙(尺八)の解説まで書いています。江戸時代に雅楽、特に篳篥がどのように見られていたのかを知るには良い参考書となりそうです。

では江戸時代の大枝流芳は篳篥についてどのように書いてあるのか見て行きましょう。

image007

(『雅遊漫録』巻5、表紙 国立国会図書館 アーカイブより 以下同)

image009

(巻5の目次 楽器の中で篳篥にのみルビが振ってあります。江戸時代も「篳篥」の漢字は読めない人が大勢いたこのかもしれませんね)

image011

写真 『雅遊漫録』巻5 篳篥 の項の本文
「津國鵜戸野村の芦を重宝す」の箇所に赤棒線を加えました)

(写真の様に文章は変体仮名で書かれていますので、この変体仮名を現代仮名に書家 角南奇峰氏に直していただきました。それだけでは読みにくいので、私が補足の言葉をカッコの中に加え、かつ私が現代語に訳したものを記載します。角南奇峰氏の変体仮名から現代仮名に直していただいた文を最後に掲載します)

「篳篥はもと亀茲(きじ)國の楽器で、胡國より伝えられました。昔は大篳篥と小篳篥の2種類がありましたが、中頃より大篳篥は絶へてしまい、今は小篳篥のみ伝えられ、左の楽(唐楽)、右の楽(高麗楽)ともに用いられています。

簧(篳篥の蘆舌、リード)は、ヨシで作ります。津國鵜戸野村(鵜殿村)の芦(葦)を重宝(貴重で大切な宝物と)しています。この地以外のヨシは、早くに使い物にならず(長持ちせず)、音色も悪いのです。蘆舌を作るには、古くからヨシを枯らして作ります。家々(奏者)によっていろいろな作り方があります。これ(篳篥)を少々携わる(練習してみました)が、吹くには三管(笙、篳篥、笛)の中で第一(一番)に難しい楽器です。

武巧者でも初心素人でも篳篥の音色の上手下手は聞き分けやすいので、少しの吹き違いも耳ざわりとなり、その音は高くてすぐに分かってしまいます。

篳篥の簧(蘆舌)を作るのも難しいのです。初心者ができるようなものではありません。

以上、これまで楽の三管(笛、笙、篳篥)の解説をしてきましたが、それぞれ一得一失(一長一短)があり、学ぶことは難しいです。

藝の頭(雅楽は芸の頭、トップ)なので、他のものと違い楽一道(雅楽を習い演奏する事)は、習う(学ぶ)ことも多く、秘事(秘密にされている事)もとても多いのです。

今、篳篥の図を出して、篳篥を知ってもらおうと思う。管の背(反対側)には孔(指穴)が二つあります。」(以上私の意訳)

この文章を読みますと著者の大枝流芳は三管(笛、笙、篳篥)を少し習ったようですが、篳篥は難しいと感じたようです。大篳篥小篳篥のあったこと、左右どちらも篳篥を奏すること、そして秘事が多いことなどを知っているのは、どなたかに習っていたようですね。

「この地以外のヨシは、早くに使い物にならず(長持ちせず)、音色も悪いのです。」と書いてもいます。

下記は書家 角南奇峰氏に変体仮名を現代仮名に直していただいたものです。

「篳篥

篳篥は もと亀茲國の楽器なるよし これも胡國より来るなり 古は大篳篥小篳篥とて二いろありしが中頃より大篳篥は絶へて 今小篳篥のみにて 左右の楽ともに用ゆ 簧は

よしにて作る 津國鵜戸野村の芦を重宝す その外のものは 早く損し音も悪しく 古く久しくからして作る 家々に色々の習あり これも少々携ゆるに よしといへども吹く事三管の中にて第一難しきものなり 武巧者初心素人にても聞きわかち易く 少々の吹きちがひ耳にたち その音高くて聞やすきものなり 簧を作る事また難し初心の及ぶ所にあらず 以上

これまでを楽の三管と云い いづれも一得一失ありて学び難きものなり 芸のかしらにて外のものと違い 楽一道は深き習多く 秘事甚だ多くあるなり 今篳篥の図を出してこれを 知らしむ 背に孔二つあり」

▼────────────────

[2]「ヨシ原焼き」と「東儀秀樹ミニコンサート」

image013

○来年の「ヨシ原焼き」は2023年2月19日(日)で予備日は2月26日、3月12日、
○「東儀秀樹ミニコンサート」を来年も3月26日(日)に開催します。
午前中ヨシ原にて「つる草抜き」 午後2時半より本澄寺にてコンサート
是非 予定に入れてください。

▼────────────────

[3]『ヨシ原通信』バックナンバー

『ヨシ原通信』を拡散していただけるとありがたいです。
『ヨシ原通信』のバックナンバーは、下記より読むことが出来ます。

http://gagaku-kyougikai.com/?p=684

11月18日(金)の「まとめの会」に配布しました資料などは下記のアドレスから見ることが出来ます。
赤對一雄氏、綾史郎氏の原稿や「中間報告」の資料も読めます。

https://drive.google.com/drive/folders/1M4MpYYxGF_GAdzrpjayvbI6BEw6zO8YX

▼────────────────

[4] 寄付のお願い

「つる草抜き」の活動を続けていくための寄付をお願いしています。どうぞよろしくお願いいたします。

寄付振込先
●郵便局は
郵便振込用紙に「ヨシへ寄付」と記入頂き
[口座番号]00140‐5‐614032
[加入者名]雅楽協議会

●銀行は
三井住友銀行 田無支店
普通 4012320
雅楽協議会 鈴木治夫

▼────────────────

[5] 問合せ先・連絡先

メール gagakudayori@yahoo.co.jp
℡042-451-8898 ℡090-1538-1693
雅楽協議会 http://gagaku-kyougikai.com
発行 雅楽協議会 ヨシ対策室事務局 担当 鈴木治夫

▼────────────────

カテゴリー: ヨシ原通信 パーマリンク