『ヨシ原通信』No.239 2023年8月30日(水)

─◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆───
『ヨシ原通信』No.239 2023年8月30日(水)
─◆─◇◆◇◆◇◆◇─◆─

[1]「笙」に「葦・ヨシ」は使いません。牧野富太郎-⑧大阪朝日新聞記事の誤り
[2]「つる草抜き」予定
[3] 寄付のお願い
[4]『ヨシ原通信』バックナンバー
[5] 問合せ先

▼──────────────

[1]「笙」に「葦・ヨシ」は使いません。

大阪朝日新聞記事の誤り

篳篥のヨシをセイタカヨシ(西湖のヨシ)と間違えた 牧野富太郎-⑧

牧野富太郎は『續牧野植物随筆』の中に昭和12(1937)年3月17日付の「大阪朝日新聞」の記事をほぼ全文掲載しています。

その新聞記事は、当時のヨシをめぐる状況が書かれており、特に「村当局として宮内省に納入」とあり、個人や団体ではなく「村がヨシを納入」としていたこと。「宮内省は葦の島を買収」とあり、宮内省は葦の島を買い取っていること。宮内省から直接楽部長坊城伯爵が下阪して視察していること。などを知ることが出来ます。ここから宮内省がいかに「ヨシ」を大切にしているかをうかがい知ることが出来ます。

それとは別に記事の中に間違いの点もありますので、それを先に指摘しておこうと思います。

この記事の中で「笙、篳篥の歌口に鵜殿の葦が使用されている」と書かれています。この記事を読んで「笙にもヨシが使われている」と思われた方がおられるようですが、これは新聞記事の間違いです。笙にヨシは使用していません。また「歌口(簧笛)」という言葉は何を指しているか分からない使い方です。

image001

(『續牧野植物随筆』牧野富太郎著 鎌倉書房 p183)

昭和の初期、雅楽の楽器に対する知名度はほとんどありませんでした。それを思うと新聞記者が楽器を指す言葉を間違えても仕方がないと思える程です。しかし、間違いは間違いですから指摘だけはさせていただきたいと思います。

笙は笙という楽器を指し、篳篥は篳篥という楽器を指します。「笙 篳篥」という楽器はありません。

また、「歌口」という言葉は、笛と笙とに使われて古くは「吹き口」といい、最近は「吹き口」とも「歌口」とも呼ばれています。「歌口」という名前は篳篥には使用されていません。

image003

笙 イラスト (『雅楽鑑賞』押田良久著)

笙の息を入れるところは「吹き口」又は「歌口」と呼んでいます。
そして、竹の下に取り付けてある振動するところの金属を「簧」と呼んでいて、材料は「響銅(さわり)」と呼ばれ銅と錫などとの合金が使用されています。

image005

篳篥 イラスト (『雅楽鑑賞』押田良久著)

篳篥に「歌口」という名称は使用しません。ヨシで作る「蘆舌(ろぜつ)」と呼ばれるリードを差し込み口にくわえて演奏します。ヨシを使用するのは、この篳篥の蘆舌のみです。他の楽器では使用しません。

image007

龍笛 イラスト (『雅楽鑑賞』押田良久著)

笛は雅楽では「神楽笛(かぐらぶえ)」「龍笛(りゅうてき)」「高麗笛(こまぶえ)」と3種類が使用されています。。
どれも息を入れるところを「吹き口」「歌口」と呼んでいます。

「歌口」について大阪朝日新聞は「笙、篳篥にとって極めて大切な歌口(簧笛・したぶえ)に使用され」とあります。新聞記者は篳篥の蘆舌を表記しようと苦心されたものと思いますが、結果的には何を指しているか、不明なものになっています。

image009

『楽家録(がっかろく)』笙の簧(こう) リードの製法 (日本古典全集『楽家録』 p326)

「簧(こう)」とは笙のリードを指す言葉です。たとえば「笙の簧」とは「笙の竹の下に取り付けてありリード」です。

▼───────────────

[2]「つる草抜き」予定

第9クール 9月11日(月)~9月14日(木)  午前8時~午前11時
(なお雨などにより中止の場合、作及び業の進み具合で日程の変更があります。)

駐車場はありません。

▼───────────────

[3] 寄付のお願い

「つる草抜き」の活動を続けていくための寄付をお願いしています。

寄付振込先
●郵便局は
郵便振込用紙に「ヨシへ寄付」と記入頂き
[口座番号]00140‐5‐614032
[加入者名]雅楽協議会

●銀行は
三井住友銀行 田無支店
普通 4012320
雅楽協議会 鈴木治夫

▼───────────────

[4]『ヨシ原通信』バックナンバー

『ヨシ原通信』を拡散していただけるとありがたいです。
『ヨシ原通信』のバックナンバーは、下記より読むことが出来ます。
http://gagaku-kyougikai.com/?p=2139

これまでに配布しました資料などは下記のアドレスから見ることがます。
https://drive.google.com/drive/folders/1M4MpYYxGF_GAdzrpjayvbI6BEw6zO8YX

▼────────────────

[5] 問合せ先・連絡先

メール gagakudayori@yahoo.co.jp
℡042-451-8898
℡090-1538-1693
雅楽協議会 http://gagaku-kyougikai.com
発行 雅楽協議会 ヨシ対策室 担当 鈴木治夫

image017

 

 

 

 

 

 

篳篥を吹く源博雅(『陰陽師 玉手匣 2』より)ⓒReiko Okano

▼────────────────

カテゴリー: つる草抜き, ヨシ原通信 パーマリンク