『ヨシ原通信』No.240 2023年9月2日(土)

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『ヨシ原通信』No.240 2023年9月2日(土)
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[1] 宮内省は「葦の島」を買収し篳篥用ヨシを守った。牧野富太郎-⑨
[2]「つる草抜き」予定
[3] 寄付のお願い
[4]『ヨシ原通信』バックナンバー
[5] 問合せ先

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[1] 宮内省は「葦の島」を買収し篳篥用ヨシを守った。牧野富太郎-⑨

大阪朝日新聞記事より

今回は昭和12(1937)年3月17日「大阪朝日新聞」の記事から、当時の宮内省は、「葭の島」を「買収」し、さらに「古典楽器保存の主旨から葦の刈取りだけは遠慮してくれ」と「お達し」も出し、かつ宮内省式部職儀式課長坊城伯爵が現地視察に行き、篳篥用ヨシを守った。

篳篥用ヨシの確保が、雅楽を演奏し伝承していく要(かなめ)であることを宮内省は認識していた。
では宮内省がどのようにして「篳篥用のヨシ」を守ろうとしていたかを見てみましょう。(記事については『續牧野万太郎随筆』「篳篥の舌を作る鵜殿ノヨシ」より)

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朝日新聞のタイトルは

「誉れの歴史二百年、鵜殿の葦を献納、折り紙つき雅楽器の歌口に、大淀の河畔五領村から」

この記事によると「今(昭和12(1937)年)から200年前(1737年)、享保元年(1716年)11月、すでに鵜殿のヨシを、梶村家の三代目梶村定政氏によって献上した。それ以来 鵜殿の葦原(ヨシ原)は、租税の恩典があり、保護を受けてきた。現在の様に村当局として宮内省に納入するようになったのは大正6(1917)年の淀川洪水が契機である」という。

ここから

⓵鵜殿の篳篥用のヨシの献上が始まったのは、江戸時代享保元年(1716)年からで、梶村家の三代目梶村定政氏が始めたことが分かります。
②このヨシを献上すると、「鵜殿のヨシ原」は租税が免除される恩典があった。ということは、「鵜殿のヨシ原」に税金が課せられていたが、篳篥用ヨシを(梶村家が)献上すると「鵜殿のヨシ原」の税金が免除・無税になった。
③大正6(1917)年の淀川の洪水以前は、個人で献上していたが、洪水以後、村当局として納入している。(個人の献上から村を挙げての献上になった理由は書かれていないが、もしかしたら洪水でヨシが流されて、個人でヨシを集めるのは難しくなり、村を挙げてヨシを集めるようにし、「免租の恩典」を受け続けられるようにしたのかもしれません。
➃記事は続けて「この大正6(1917)年の洪水の後、河川改修にあたり、宮内省ではこの葦の島を買収、同時に宮内省から「日本の古典楽器保存の主旨から葦の刈取りだけは遠慮してくれ・・」とのお達しがあった」と記します。

大正6(1917年)の洪水の改修の時に「宮内庁は葦の島を買収」したという「葦の島」とはどれかを調べている途中ですが『近世の淀川治水』(山川出版社 p65)によると「17世紀初頭、摂津国島上郡大塚村(現高槻市、鵜殿より少し下流)に葭島(よしじま)(6反7畝余 約7000㎡ 現在の「つる草抜き」と同程度の面積)が川岸に接して出現した。(中略)葭は商品価値を有するものであり、葭島の出現は恩恵をもたらしたが川中にせり出しているこれらの島で、毎年冬の葦苅りの時期まで葭を生育させておくことは、治水的観点からすれば、おおいに問題があった。生育した葭が水の流れの妨げとなるからである」という。確かに治水の観点から見れば、ヨシが生えていると川の流れを妨げます。それが分かっていても、宮内省は「葭島(あしじま)川の中に出来た篳篥用ヨシの多く生える所」を「買収」してヨシを守りました。そこに生育するヨシを全て宮内省のものとしたのだと思います。
これだけでなく、「葦の刈り取りは遠慮してくれ」とのお達しも出したという。

ここから読み取れるのは、宮内省がいかに「鵜殿のヨシ・篳篥用ヨシ」を大切にしていたかが分かります。このヨシが入手できなくなると、雅楽の音色が変わり、雅楽を演奏することが出来なくなるからです。何としてもこのヨシを守りたいという想いが伝わってきます。

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⑤この宮内省の姿勢を反映させてと思いますが、「宮内省楽部長 坊城伯爵が下阪」しています。

坊城伯爵は坊城俊良(ぼうじょう としなが 1893年‐1966年)ではないかと思います。坊城俊良伯爵は、宮内省式部職儀式課長として鵜殿へ実地視察に出かけた。(現地視察の1937年坊城氏44歳)坊城氏が一人で現地視察に来るわけではないでしょうから、篳篥用ヨシの事が良く分かる奏者も同行して、ヨシの具合を確認したと思います。毎年宮内省から鵜殿にヨシの出来具合の実地視察を行い、良いヨシを納めてもらっていたとも読めます。「村長以下係官は永劫に保存することを誓ったが本年度の五百本は16日午後吏員総出で立派な箱に納め即日宮内省へ向け発送」とあります。ヨシの生育具合は年によって・天候によって異なりますので宮内省もヨシの様子を見て納入してもらっていたのだと思われます。宮内省のヨシへ寄せる想いが伝わるように思います。

(つづく)

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[2]「つる草抜き」予定

第9クール 9月11日(月)~9月14日(木)  午前8時~午前11時
(なお雨などにより中止の場合、及び作業の進み具合で日程の変更があります。)
駐車場はありません。

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[3] 寄付のお願い

「つる草抜き」の活動を続けていくための寄付をお願いしています。

寄付振込先
●郵便局は
郵便振込用紙に「ヨシへ寄付」と記入頂き
[口座番号]00140‐5‐614032
[加入者名]雅楽協議会

●銀行は
三井住友銀行 田無支店
普通 4012320
雅楽協議会 鈴木治夫

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[4]『ヨシ原通信』バックナンバー

『ヨシ原通信』を拡散していただけるとありがたいです。
『ヨシ原通信』のバックナンバーは、下記より読むことが出来ます。
http://gagaku-kyougikai.com/?p=2139

これまでに配布しました資料などは下記のアドレスから見ることがます。
https://drive.google.com/drive/folders/1M4MpYYxGF_GAdzrpjayvbI6BEw6zO8YX

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[5] 問合せ先・連絡先

メール gagakudayori@yahoo.co.jp
℡042-451-8898 ℡090-1538-1693
雅楽協議会 http://gagaku-kyougikai.com
発行 雅楽協議会 ヨシ対策室 担当 鈴木治夫

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篳篥を吹く源博雅(『陰陽師 玉手匣 2』より)ⓒReiko Okano

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