『ヨシ原通信』No.264 2023年11月5日(日)

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『ヨシ原通信』No.264 2023年11月5日(日)
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[1] 世界最強の「特定外来生物」ナガエツルノゲイトウの駆除へ
[2]「つる草抜きメンバーも参加して鵜殿ヨシ原での「特定外来生物」ナガエツルノゲイトウの駆除」 植物担当:赤對一雄(ナガエツルノゲイトウバスターズ鵜殿班)
[3]「まとめの会」を開きます。11月22日(水)
[4] 篳篥の蘆舌用ヨシの購入について
[5]『ヨシ原通信』バックナンバー
[6] 問合せ先

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[1] 世界最強の「特定外来生物」のナガエツルノゲイトウ

名前を聞いた時は、さっぱり分かりませんでした。話を聞いていくと侵略的で世界最強で水中でも陸の上でも強力に繁殖し、他の植物の光合成を止め、そのままにしていたら稲などは採れなくなる「特定外来生物」という。
このナガエノツルノゲイトウが、3,4年前より上牧・鵜殿ヨシ原にも入り込み2020年1月から駆除にとり組まれていました。
今回は、導水路の取り入れ口の繁茂しているのを駆除されたということです。どうも淀川で流れていた「ナガエノツルノゲイトウ」が、導水路への水のくみ上げと共に入り込んできたのではないかと言われています。
もしこのままにしておきますと、導水路に水を流すとヨシ原は「ナガエノツルノゲイトウ」の原になってしまいましょう、導水路の水を止めると「カナムグラ」がさらに繁茂しヨシを押し倒して行くでしょう。
まずは、下記の赤對一雄さんからのレポートをお読みください。

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[2] つる草抜きメンバーも参加して鵜殿ヨシ原での「特定外来生物」ナガエツルノゲイトウの駆除

植物担当:赤對一雄(ナガエツルノゲイトウバスターズ鵜殿班)
2023年11月1日、高槻市立博物館の高田先生が主宰する「ナガエツルノゲイトウバスターズ」が、総勢16名で、鵜殿ヨシ原再生の為の導水路の淀川本流からのポンプ取水場吐出口に大繁殖したナガエツルノゲイトウの駆除作戦を国交省淀川河川事務所、NEXCO西日本、三井住友建設や高槻市農林緑政課殿のご協力のもとに実施されました。

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(導水路 取水口付近 ナガエノツルノゲイトウの繁茂)

この導水路は、雅楽協議会「つる草抜き」メンバーの方はご存じのヨシ原(=高水敷)を貫く水路で、カナムグラやオオブタクサの芽生えの時期に発芽した苗を水没させて枯らせ、ヨシ原の再生を図るために水を流していました。バスターズメンバーの他、特定活動NPO法人シニア自然大学校の地域組織で、鵜殿のヨシ原で、同種の発見当初から駆除を行っていた「京(みやこ)とおうみ自然文化クラブ」からも4名、そして、「つる草抜き」メンバーからも、綾先生や、角南さん、上野さん、白尾さんの3名がボランティアとして参加されました。

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(2023年11月1日 ナガエノツルノゲイトウの駆除をする皆さん)

今回のナガエツルノゲイトウ駆除作戦が、工事再開を前に急遽実施されたのは、偶々、2023年9月29日、市の鵜殿自然観察会の下見時に、新名神高速道橋梁工事駐車場の作業員詰め所跡周囲に「靴底拡散」によると見られる繁殖が確認された事からです。早速、バスターズメンバーによって、2023年10月4日、葉から根に栄養分が移動する「移行期」を狙い、除草剤(ラウンドアップ1%希釈液)散布後、下の写真の様に光合成を止める防草シート掛けを行いました。その後、発生源の確認の為のパトロールの結果、導水路ポンプ吐出口を一面に覆う大繁殖を確認しました。

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(ナガエノツルノゲイトウの光合成を止める防草シート掛け)

自然豊かな鵜殿の導水路の入り口に、定着、繁茂した茎や葉が、ちょっとした大雨で増水し、水位が上がった状態で導水路を経てヨシ原全域に流れ込み、定着・繁殖する事態は絶対に避けなければなりません。三千年前から存在し、希少種・絶滅危惧種の宝庫とも言われる「鵜殿のヨシ原」の豊かな自然の植生の維持のためには、注意深い大掛かりな駆除が必要です。まず導水路の川床に散逸した切れ茎を予備的に回収駆除し、その後、2023年11月1日、バスターズ本隊他、計16名の応援を得て、根付く前に茎を巻き上げ、根を掘り上げ、約408Kgを駆除しました。結果、導水路も含め鵜殿ヨシ原全体での駆除総合計は540.03Kgに達しました。

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(2023年11月1日、バスターズ本隊他、計16名の応援を得て、ナガエノツルノゲイトウ約408Kgを駆除)

1.侵略的、世界最強の「特定外来生物」のナガエツルノゲイトウとは、その繁殖特性

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(ナガエノツルノゲイトウ)

そもそも、ナガエツルノゲイトウは、園芸種のポーチュラカと同じ中南米原産のヒユ科植物で、写真の様に、白い小さな花の花柄が長いのが特徴の水陸両用型の侵略的外来植物です。太い茎は中空になっており、岸辺から茎をのばし、水面を覆いつくすように繁茂する植物(抽水植物)です。そして、水路を塞いでしまうだけでなく、水面に広がる事で水底への日光を遮って水中の環境を悪化させるほか、増水時にはちぎれた茎や葉が排水機場のポンプを詰まらせ「内水氾濫」の原因にもなります。また、田んぼにも侵入し、稲よりも生長が早く、稲作に重大な影響を与えることも懸念されています。

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(写真 小さな茎の一片からも発根・発芽(写真右上)し、定着・繁殖する)

そして、日本の場合、種子で繁殖することはなく、手のひらに載るような小さな茎の一片からも発根・発芽(写真上)し、定着・繁殖することです。一般的には、草刈り機で地上部を除去し植物片を撒き散らしたり、靴底や、車のタイヤに挟んで、かえって繁殖を広げた事例もありました。私の靴底に挟まった実例では20日で発芽(写真右下)しました。また、除草剤を散布しても本種の根は生き残り、他種は枯れ、かえって更に繁茂します。さらに、経験

不足のボランティアは微細な茎などのかけらを放置、流失させ、かえって拡散させる事もあります。よって安易な駆除を防止する目的もあって、法令で保管、移動等も禁止され罰則もあります。

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(写真 靴底に挟まったナガエノツルノゲイトウは20日で発芽)

具体的には、国内に繁殖する本種は種子を作らず栄養繁殖に依り、イチゴのランナーのような茎を枝分かれさせながら1m位に伸ばし、節々から新たな根を張り、クラスター状の塊になって定着繁茂します。繁殖は「水陸両用型」で、河岸崖の傾斜を登る程の力はありませんが、主根(直根)はゴツゴツしたごぼう状で、太さ6~8㎜、深さは50㎝に達します。発芽のし易さは、根>茎>葉の順で、定着のし易さは水辺>陸地で、水面での茎の成長は特に早いようです。注意すべきは駆除時の「切れ根」や茎の「断片」です。茎は中空で水面に浮上し、かつポキッと折れ易く、根は詰まっていますが、茎と同様折れ易く地下に残存しがちです。よって、拡散力、再生力が強く世界最強の「侵略的」外来植物と言われる所以なのです。

2. 鵜殿ヨシ原(=高水敷)での駆除の現況

ヨシ原(=高水敷)でナガエツルノゲイトウが初めて確認されたのは、2019年9月末、淀川本流の取水ポンプ場周辺で、2020年1月中旬「京とおうみ自然文化クラブ」メンバーが根を掘り上げて駆除しました。その後、人の移動での靴底による新たな繁殖が「ヨシ原観察通路」にクラスター状で確認されましたが、2020年7月以降、集中駆除を行い累計132.03Kgを駆除しました。そして、今回11月1日の導水路ポンプ取水場吐出口周辺での大型ごみ袋68個分、約408Kgを加え、累計、540.03Kgに達しました。

いっぽう、水無瀬から上牧、五領エリアの雨水他の排水を行う玉子排水機場新川放水路周辺は、2021年4月以降、管轄する高槻市東部土地改良区、維持管理業者アイテック、並びに高槻市担当課殿、バスターズ本隊、「京とおうみ自然文化クラブ」等の応援を得て、総計634.09Kgを駆除(継続中)しました。

また、高槻市、茨木市、摂津市並びに吹田市の一部に農業用水を供給する、上流側の五領揚水機場周辺での本種駆除は、まさに北摂一帯への侵入を防ぐ水際阻止が求められ、慎重な手掘り中心に行いました。2021年10月以降、土地改良区、維持管理業者アイテック殿のご協力のもと、ここでの駆除は累計117.15Kgです。因みに鵜殿ヨシ原での現時点での駆除総累計は1,291.27Kgに達しました。

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(2023-11-5 つる草抜き植物担当・ナガエツルノゲイトウバスターズ鵜殿班:赤對一雄)

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[3]「まとめの会」を開きます。

11月22日(水)午後1時30分 上牧公民館 2階会議室
(国道171号線 上牧町一丁目交差点を淀川方面に曲がり100m先左側)
篳篥用ヨシ再生への情報を共有するとともに意見を出し合う会です。
是非お越しください。お待ちしています。

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[4] 篳篥の蘆舌用ヨシの購入について

「つる草抜き」のエリアの篳篥蘆舌用のヨシを購入希望の方は下記へご連絡ください。
連絡先・問合せ先 メールアドレス
kimura7633@gmail.com (上牧実行組合 木村和男氏)

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[5]『ヨシ原通信』バックナンバー

『ヨシ原通信』を拡散していただけるとありがたいです。
『ヨシ原通信』のバックナンバーは、下記より読むことが出来ます。
http://gagaku-kyougikai.com/?p=2139

これまでに配布しました資料などは下記のアドレスから見ることがます。
https://drive.google.com/drive/folders/1M4MpYYxGF_GAdzrpjayvbI6BEw6zO8YX

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[6] 問合せ先・連絡先

メール gagakudayori@yahoo.co.jp
℡042-451-8898 ℡090-1538-1693
雅楽協議会 http://gagaku-kyougikai.com
発行 雅楽協議会 ヨシ対策室 担当 鈴木治夫

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篳篥を吹く源博雅(『陰陽師 玉手匣 2』より)ⓒReiko Okano

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