『ヨシ原通信』No.302 2024年5月15日(水)

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『ヨシ原通信』No.302 2024年5月15日(水)
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[1]「つる草抜き」を考える-⓶
深さ90㎝まで軟らかい土から篳篥用ヨシは生育する
[2]「つる草抜き」今後の日程
[3]『篳篥用ヨシの再生へ』活動記録 冊子発行
[4] 篳篥の蘆舌用ヨシの購入について
[5] 寄付のお願い
[6]『ヨシ原通信』バックナンバー
[7] 問合せ先

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[1]「つる草抜き」を考える-⓶

深さ90㎝まで軟らかい土から篳篥用ヨシは生育する

前回(『ヨシ原通信』№301)はヨシの地下茎や根を「全体的に見ると根系(地下茎・根)の分布は約4割以上が深さ50㎝までである」ことが分かりました。

ですから「もし表土を50㎝余り掘削したら、つる草などの種や地下茎も除くことは出来るかもしれないが、ヨシの根系(地下茎・根)の4割以上も除いてしまう事になり、ヨシは激減してしまうということが分かりました。

今回は、土壌の硬さ・軟らかさに視点を当てて見て行きます。

結論から先に述べると、「篳篥用ヨシの採取は、深さ90㎝まで軟らかな土壌が、篳篥用ヨシの性育環境 になっている」と研究論文『鵜殿ヨシ原の篳篥ヨシの文化的価値と伝統知の保全及び篳篥ヨシ再生に関わる技術的条件」(柴田知己p238)に記されています。

https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_detail_md/?reqCode=frombib&lang=0&amode=MD823&opkey=b168054036072823&bibid=6787620&start=

要約すると篳篥用のヨシを育てるには、軟らかい土が90㎝の深さまで必要ということなのです。

では、下の資料をご覧ください。

NEZCO 第4回検討会(2014年5月25日) 資料-2 9ページ

https://corp.w-nexco.co.jp/newly/h26/0526/pdfs/04.pdf

image001

上の図の中のグラフの左側は「ヨシの生育が良い」A地点、右側は「ヨシの生育が悪い」B地点の土壌の硬さをグラフにしたもので、良く生育するA地点は深くまで土壌が柔らかく、生育の悪いB地点は浅い所で土壌が硬くなっていることを表しています。

この土壌の硬さと篳篥用ヨシ(この論文では『篳篥ヨシ(選抜)』と記載される)の生育との関連をさらに詳しく分析したのが先ほど引用した『鵜殿ヨシ原の篳篥ヨシの文化的価値と伝統知の保全及び篳篥ヨシ再生に関わる技術的条件』柴田知己氏の2022年の論文です。

(この論文は篳篥用ヨシについて多角的に研究されています。ここでは土壌の硬さ・軟らかさのみ取り上げます)

まず、土壌の硬さを測った個所は「篳篥エリア」「篳篥エリア外」「水よりエリア」「ヨシ未成育エリア」「つる植物優先エリア」のようですが、計測資料として記しているのは「篳篥エリア」「篳篥エリア外」「水よりエリア」でした。「水ヨシエリア」は篳篥用ヨシとしては使用しないので、グラフの中には記載がありません。

image003

(測定した箇所の図『鵜殿ヨシ原の篳篥ヨシの文化的価値と伝統知の保全及び篳篥ヨシ再生に関わる技術的条件』柴田知己 2022 p38)
https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/6787620/design0315.pdf

途中の数字などの検討については本文を読んでいただくとして、

下の表は 篳篥用ヨシが採取できるのは深さ90㎝まで(Nd値3.3以下)軟らかい土壌であることを示している棒グラフです。

image005

(『鵜殿ヨシ原の篳篥ヨシの文化的価値と伝統知の保全及び篳篥ヨシ再生に関わる技術的条件』p50)

https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/6787620/design0315.pdf

青色のグラフ(H1 H2 H3 H4 H6 H7 H8 H9の「篳篥エリア」)で短い棒グラフがある箇所(H4)は、硬い所がすぐに現れてくる箇所です。

この表を分かり易くまとめたのが下の表で、このグラフは、「篳篥エリア」と「篳篥エリア外」での土の硬さ・軟らかさによって篳篥用ヨシの採取できた本数をグラフにしてあるものです。

image007

(『鵜殿ヨシ原の篳篥ヨシの文化的価値と伝統知の保全及び篳篥ヨシ再生に関わる技術的条件』p50)

https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/6787620/design0315.pdf

「篳篥エリア」(H1 H2 H3 H4 H6 H7 H8 H9 )でも「篳篥エリア外」(N4 N9 N11 N12 N14)でも、土壌の軟らかい (白色の棒グラフ) ところで篳篥用ヨシが採取され、硬い所(鼠色の棒グラフ)では採れないことを表しています。

土の軟らかい所の「篳篥エリア」からは11本です。「篳篥外エリア」でも土が軟らかければ10本採取できています。ただし「篳篥外エリア」での篳篥用ヨシの採取は効率が悪いとのことです。

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(図・写真 土壌の硬さ、軟らかさを調べる「簡易動的コーン貫入試験」

『鵜殿ヨシ原の篳篥ヨシの文化的価値と伝統知の保全及び篳篥ヨシ再生に関わる技術的条件」(柴田知己p40)

https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/6787620/design0315.pdf

下の左の表は「篳篥エリア」10か所、右表は「篳篥エリア外」14か所の土壌の深さごとの硬軟をグラフにしてあります。

「篳篥エリア」は90㎝までNd値(土の硬さ)3.3以下(土が軟らかくヨシが生育できる)箇所が多い。

しかし「篳篥エリア外」はNd値3.3以下がばらばらで、ヨシのある生育に適切な土の軟らかさが不均等になっています。

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(『鵜殿ヨシ原の篳篥ヨシの文化的価値と伝統知の保全及び篳篥ヨシ再生に関わる技術的条件』p51)

https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/6787620/design0315.pdf

次に(下のグラフ)篳篥用ヨシ(蘆舌に使用できるヨシ)が採れた箇所の土の硬さ(左側グラフ)と、蘆舌には使用できないヨシの箇所の土の硬さ(右側グラフ)。

ここから篳篥用のヨシ(蘆舌に使用できるヨシ)は、90㎝の深さまで軟らかい土(Nd値3.3)てあることが分かります。

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(『鵜殿ヨシ原の篳篥ヨシの文化的価値と伝統知の保全及び篳篥ヨシ再生に関わる技術的条件』p52)

https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/6787620/design0315.pdf

これらの事から『篳篥の蘆舌として用いられる鵜殿ヨシの持続的採取に関する伝統知の検証』柴田知己、繁冨剛、包清博之 2020.9.26 p702) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jila/84/5/84_699/_pdf/-char/ja

の中では

「柔らかい土壌の方が『篳篥ヨシ(選抜)』(蘆舌に使用する篳篥用ヨシ)が得られる傾向があり、地下茎が深さ方向に発達することで太さ・硬さが求められる篳篥ヨシが生育できる環境になっていることが示唆された。地下部の柔らかさは地表部からは判別できないものの、熟練採取者は、地上部の状況から陸ヨシの土壌が柔らかい場所を経験的に把握していると推察される」と記しています。

篳篥用ヨシの採取には、土壌の硬さの調査から、90㎝の深さまでは軟らかい土(Nd値3.3以下)が求められているとこの論文で明らかにされています。

つる草などを除草するために「表土を50㎝余り掘削する」ことは、「軟らかい土を除いてしまう」ことですから、現在、深さ1mの軟らかい土の所でも、もし50㎝も表土を掘削してしまうと軟らかい土は50㎝しか残らず、「篳篥用ヨシ」の生育はさらに減ってしまいましょう。

ですから「表土の掘削」は、⓵ヨシの地下茎や根を除いてしまうばかりでなく、⓶ヨシの生育に必要な軟らかい土おも除いてしまう事になります。

(つづく)

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[2]「つる草抜き」2024年 日程

次は第4クール(5月18日~)となります。
日程は天候やつる草の伸び具合で、変更の場合もあります。
都合をつけてご参加いただけますようお願いいたします。寄付も募っています。

5月20日の予報は現在雨の予報になっています。

第4クール 5月18 (土) /19日(日) /20(月)   ※1
第5クール 6月3(月) /4(火) /5(水)  ※1
第6クール 6月22(土) /23(日) /24(月) (夏時間) ※2
第7クール 7月8(月) /9(火) /10(水) (夏時間) ※2
第8クール 7月22(月) /23(火) (夏時間) ※2
第9クール 8月3(土) /4(日) (夏時間) ※2
第10クール 8月20(火)/ 8/21(水)   (夏時間) ※2

※1の 第1クールから第5クールは、9時から午後4時です。
※2の 第6クールから第10クールは、夏時間8時から11時です。トイレは使用できません。
※雨天の場合は中止です。また天気予報で、「雨の予報」の場合、中止になる可能性が高いです。
「中止」の場合はこの『ヨシ原通信』などでお知らせします。

●「つる草抜き」は朝9時から夕方4時までですが、受付専用の事務員がいるわけではありませんので、ボランティアの方の受付は、基本的に9時と1時とになります。ご了承ください。
(問合せ先は 090-1538-1693 雅楽協議会・鈴木となります)

●持物 鎌などはありますが、手袋(軍手)や帽子、飲み物・食べ物などは持参ください。
●ボランティア保険(障害保険 ケガや熱中症)に今年も入っています。氏名の記載をお願いしています。 保険料はこれまで同様に雅楽協議会が支払います。
●トイレはNEXCO西日本の工事場の男女別のトイレを今年も借用します。
(6月中旬からは、台風などの影響を避けるため工事関連は全て撤去されますので、トイレも無くなります)

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[3] つる草抜き 活動記録 『篳篥用ヨシの再生へ ~上牧・鵜殿ヨシ原~』冊子発行

「つる草抜き」は3年目になります。なぜ篳篥用ヨシが悪くなっていったのかなど疑問に思うこと、つる草抜きの意義や活動などを記録しました。
鈴木治夫 著 発行: 2024年3月 雅楽協議会 サイズ:A4 頁数:54頁 定価 1,100円(税込)
問合せ・購入 https://musashino-gakki.com/product/?p=100701
武蔵野楽器 ℡03-5902-7281
上記アドレスより申し込めます。

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[4] 篳篥の蘆舌用ヨシの購入について

「つる草抜き」エリアの篳篥蘆舌用のヨシを購入希望の方は下記へご連絡ください。
連絡先・問合せ先 メールアドレス
kimura7633@gmail.com (上牧実行組合 木村和男氏)

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[5] 寄付のお願い

篳篥用ヨシ再生(つる草抜き)への寄付振込先

●郵便局は
郵便振込用紙に「ヨシへ寄付」と記入頂き
[口座番号]00140‐5‐614032
[加入者名]雅楽協議会

●銀行は

三井住友銀行 田無支店
普通 4012320
雅楽協議会 鈴木治夫

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[6]『ヨシ原通信』バックナンバー

『ヨシ原通信』のバックナンバーは、下記より読むことが出来ます。
http://gagaku-kyougikai.com/?p=4033
http://gagaku-kyougikai.com/?p=2139

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[7] 問合せ先・連絡先

メール gagakudayori@yahoo.co.jp
℡042-451-8898 ℡090-1538-1693
雅楽協議会 http://gagaku-kyougikai.com

発行 雅楽協議会 ヨシ対策室 担当 鈴木治夫

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