『ヨシ原通信』No.314 2024年7月8日(月)

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『ヨシ原通信』No.314 2024年7月8日(月)
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[1]「つる草抜き」第7クール
明日7月9日(火)
[2]「つる草抜き」を考える-⑥
切下げ地と導水路
[3]「つる草抜き」今後の日程
[4]『篳篥用ヨシの再生へ』活動記録 冊子発行
[5] 篳篥の蘆舌用ヨシの購入について
[6] 寄付のお願い
[7]『ヨシ原通信』バックナンバー
[8] 問合せ先

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[1]「つる草抜き」第7クール

第7クール 明日7月9日(火)も「つる草抜き」
雨も予想されましたが天気予報は晴れ、曇りに変わりました。
第7クールも順調に「つる草抜き」が進んでいます。
明日7月9日(火)も朝8時から11時まで行います。都合が付きましたらご参加ください。

image001昨年7月2日の「つる草抜き」エリア ヨシが4m~5mに伸びています。(2023年7月2日)

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[2]「つる草抜き」を考える-⑥

切下げ地と導水路

国土交通省近畿地方整備局淀川河川事務所河川環境課は、「鵜殿ヨシ原保全の取り組み」とのタイトルの資料を2015(平成27)年10月と昨年2023(令和5)年10月発行の2つの資料を公開しています。

(・2015年資料 https://www.kkr.mlit.go.jp/river/kankyou/tashizen/qgl8vl00000063vf-att/06.pdf

・2023年資料 https://www.kkr.mlit.go.jp/river/kankyou/tashizen/or2riv000001sbxz-att/No.3.pdf

2015年と2023年と2つの資料を発行していますが、ここでは昨年2023年発行の資料を見ていきたいと思います。

下の写真をご覧ください。

まずは「ヨシ原」の場所について地図が掲載されています。大阪府高槻市の淀川左岸に位置し、桂川、宇治川、木津川の合流地点の下流になります。(資料「鵜殿ヨシ原保全の取り組み」p3) 国交省は「鵜殿ヨシ原」と記載しますが、このヨシ原は「上牧実行組合」と「鵜殿のヨシ原保存会」の2つの団体が入会権(ヨシの刈り取る権利)を持たれていますので、上牧と鵜殿の名称を入れて「上牧・鵜殿ヨシ原」と呼んでいます)

image003

次に下の図、ヨシ原のヨシ群落の推移について1966年、1982年、2022年の様子が色分けにして掲載してあります。

図の左上のヨシ原は、1966年の図で「ヨシ優先群落」は緑色に塗られ「昭和41(1966)年には58㏊あったヨシ原」と記され、1966年には全体の80%余りがヨシ原だったことが分かります。

真ん中の図は「昭和57(1982)年」の図で、ヨシ原が「5㏊まで減少」と記されています。1966年からの16年間で58㏊あったヨシ原は5㏊に減り、80%あったヨシ原は1982年には10%以下に減ってしまっていることが分かります。

それからさらに40年後2022(令和4)年の一番下の図では、ヨシ原は6㏊に「回復」と記しています。

しかし図を見ると「回復」した青色の「ヨシ優先群落」はヨシ原の下流、「切り下げ地」の部分が増えたのみで中流域、上流域の「ヨシ優先群落」は減っています。

40年かかっても1ha (10,000㎡)増えたに過ぎません。

この3つの表から分かることは、1966年の58㏊あったヨシ原(ヨシ原の80%がヨシ群落)だったのが、16年後の1982年には5㏊(全体の10%余)に減り、2022年でも「切り下げ地」以外のヨシ原は減り続けていることを表していました。

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この様な中で、河川事務所河川環境課は「鵜殿ヨシ原保全の取り組み」として⓵「高水敷切下げ対策」、⓶「導水路による配水対策」の2つをあげています。

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「切下げ地」

まず⓵「高水域切下げ対策」(通称・切下げ地)について、次のように記しています。(p7)(上図)

「鵜殿ヨシ原復元の基本的な対策と位置付づけ、切下げを行った際に根茎の移植を行い、ヨシ原を復元する対策」と記しています。

「切下げ」は「ヨシ原復元の基本的な対策」とし、「ヨシ原復元」の重要な対策と位置付けられています。

この「切下げ地」の目的や内容と主旨は「高水敷の干陸化によりカナムグラなどの陸生植物が繁殖し、ヨシが減少」と記し、「高水敷の干陸化」の対策として川の水面より少し高くし、「洪水などで増水」の時は冠水するように掘下げる対策が「切下げ」の目的としています。

この「切下げ」によりヨシがどのぐらい回復していったか、各エリアごとにまとめられ、資料p12~17まで表が掲載されています。

ヨシを水に近づけ「ヨシの復元」を目指しますので、ここから生えてくるヨシは全て「水ヨシ」(「水域ヨシ」などと呼ばれる水ヨシ)となります。篳篥用のヨシは「陸ヨシ」を使用しますので、「水ヨシ」が増えても、そのヨシは篳篥用のヨシには使用できません。

この切下げ地の場所は下図(p8)で、ヨシ原の下流域(下図 白線内「切下げ範囲」)です。

image009

篳篥用ヨシは「陸ヨシ」

雅楽の篳篥のリードに使用するヨシは「陸ヨシ」と呼ばれるヨシで、水に近い「水ヨシ」は細いのが多く、軟らかいなどの理由で使用できないことが10年余り前に研究者の方々や地元の方々により明らかになりました。すなわち「ヨシ原復元の基本的な対策」と位置付づけた「切下げ」対策による「ヨシの復元」は、「水ヨシ」のみを「復元」させることなります。

雅楽の篳篥ヨシに使用する「陸ヨシ」ではないので「切下げ地」のヨシは篳篥用には使用できないのです。

「導水路」

「鵜殿ヨシ原保全の取り組み」の2つ目は「導水路による配水対策」で、この説明は資料の中では簡単に下図が1枚掲載されるにとどまります。

image011

「導水路」対策と「切下げ地」対策との関係について、いろいろと調べてみますと2002年の「淀川水系流域委員会 第8回委員会(H14.2.21)資料3 「自然豊かな淀川を目指して(案)」 に記されています。

https://www-1.kkr.mlit.go.jp/river/yodoriver_old/kaigi/iin/8th/pdf/iin_8th_003-1.pdf

この資料のp8に「(3)鵜殿地区のヨシ原に象徴される湿地環境の保全・復元・管理」に「切下げ地」と「導水路」の対策について次のように書いてありました。

(20年以上前の古い資料ですが他に記されているのを見つけられなかったのでここから引用します)

「(3)鵜殿地区のヨシ原に象徴される湿地環境の保全・復元・管理

・鵜殿のヨシ原は、淀川の原風景であり、生態学的、歴史文化遺産的にも貴重であり、保全していく必要がある。

・鵜殿地区は河床低下にともない乾燥化が進んでおり、現状でヨシ原を保全することは困難なため、保全にあたっては高水敷の切り下げ対策を中心とした鵜殿地区の保全・整備を進めることとし、暫定的な保全処置として導水によるヨシ原の保全、育成を行うことが必要である。」

ここに「導水路対策」は「暫定的な保全処置」と記されています。「暫定的」ということですから、いつかはやめるという意味で書かれています。この導水路は1996(平成8)年から始められました。これが書かれた2002(H14)年の時すでに6年が経過し、今年(2024年)で28年経過しています。

「切下げ」対策と「導水路」対策は同等の位置づけかと思っていましたが、資料を読みこんでいくと「切下げ」対策が主で、「導水路」対策は従の関係のようです。

この「導水路」対策も「水を通してヨシを回復させる」ということで「水ヨシ」を増やす事になります。篳篥用ヨシの視点からのみ見ますと「導水路」対策でも、篳篥用ヨシの「保全」にはつながらないということになります。

「切下げ地」「導水路」とも「水ヨシ」の「保全」

「切下げ地」「導水路」の2つの「ヨシ原保全」の対策は、「水ヨシ」の「保全」で、篳篥用ヨシの「陸ヨシ」の保全にはつながりません。

「篳篥用ヨシ」への言及

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この

「鵜殿ヨシ原保全の取り組み」発行・国土交通省近畿地方整備局淀川河川事務所河川環境課2023(令和5)年10月https://www.kkr.mlit.go.jp/river/kankyou/tashizen/or2riv000001sbxz-att/No.3.pdf

の資料p6に

「雅楽 良質なヨシは雅楽器「ひちりき(篳篥)」のろぜつ(蘆舌:リード部分)に使用」と解説して篳篥の写真を掲載しています。

上の図 資料p6

また「導水路」対策について記載のあった前掲資料(2002年「淀川水系流域委員会 第8回委員会(H14.2.21)資料3 「自然豊かな淀川を目指して(案)」)

https://www-1.kkr.mlit.go.jp/river/yodoriver_old/kaigi/iin/8th/pdf/iin_8th_003-1.pdf

22年前の資料ですがそこには

「・ヨシ原全体の保全は、人的管理が必要であり、その為には幅広い持続可能な利用も含めて検討していくとともに、雅楽、よしずなどヨシの利用文化の保全・継承をしていく必要がある」(p9)と記されています。

2020年の淀川環境委員会では (第43回 淀川環境委員会 参考資料-3 令和3年(2020年)3月25日 第42回 淀川環境委員会 議事要旨による)

https://www.kkr.mlit.go.jp/yodogawa/activity/comit/kankyo_iinkai/bd083b0000005ya7-att/bd083b0000005yeo.pdf

「 2)陸域環境部会

(意見・コメント)

・カナムグラが増えた根本原因を掴んでおく必要がある。

・復元・保全の目標である「篳篥の蘆舌材となる良質なヨシ」について、地盤高や土質の多様性により、本来様々な質のヨシ群落やオギ群落が分布していたという認識にたち、目標とするヨシが採取できる環境も鵜殿の多様性の一つとして扱っていくべきである。」

と記しています。

上牧・鵜殿ヨシ原はいろいろな課題が山済みしています。

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[2]「つる草抜き」2024年 日程

第7クールも明日1日です。暑いので熱中症に注意しながら進めたいと思います。第8クール以降の予定は下記です。ご参加をお待ちしています。

第7クール 7月9日(火)  (夏時間) ※2
第8クール 7月22(月) /23(火) (夏時間) ※2
第9クール 8月3(土) /4(日) (夏時間) ※2
第10クール 8月20(火)/ 8/21(水)   (夏時間) ※2

※雨天の場合は中止です。また天気予報で、「雨の予報」の場合、中止になる可能性が高いです。
「中止」の場合はこの『ヨシ原通信』などでお知らせします。

●夏時間の「つる草抜き」は朝8時から11時までです。受付専用の事務員がいるわけではありませんので、ボランティアの受付は、8時のみとなります。よろしくお願いいたします。
(問合せ先は 090-1538-1693 雅楽協議会・鈴木となります)
●持物 鎌などはありますが、手袋(軍手)や帽子、飲み物・食べ物などは持参ください。
特に熱中症にご注意ください。
●ボランティア保険(障害保険 ケガや熱中症)に今年も入っています。氏名の記載をお願いしています。保険料はこれまで同様に雅楽協議会が支払います。
●6月中旬からは、台風などの影響を避けるため工事関連は全て撤去されますので、トイレも無くなります。

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[3] つる草抜き 活動記録 『篳篥用ヨシの再生へ ~上牧・鵜殿ヨシ原~』冊子発行

「つる草抜き」は3年目になります。なぜ篳篥用ヨシが悪くなっていったのかなど疑問に思うこと、つる草抜きの意義や活動などを記録しました。
鈴木治夫 著 発行: 2024年3月 雅楽協議会 サイズ:A4 頁数:54頁 定価 1,100円(税込)
問合せ・購入 https://musashino-gakki.com/product/?p=100701
武蔵野楽器 ℡03-5902-7281

上記アドレスより申し込めます。

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[4] 篳篥の蘆舌用ヨシの購入について

「つる草抜き」エリアの篳篥蘆舌用のヨシを購入希望の方は下記へご連絡ください。
連絡先・問合せ先 メールアドレス
kimura7633@gmail.com (上牧実行組合 木村和男氏)

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[5] 寄付のお願い

篳篥用ヨシ再生(つる草抜き)への寄付振込先

●郵便局は
郵便振込用紙に「ヨシへ寄付」と記入頂き
[口座番号]00140‐5‐614032
[加入者名]雅楽協議会

●銀行は
三井住友銀行 田無支店
普通 4012320
雅楽協議会 鈴木治夫

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[6] 『ヨシ原通信』バックナンバー

『ヨシ原通信』バックナンバー 検索 (各アドレス(青ローマ字)をCtrlを押しながらクリック)

№1~№130 (2022年2月10日) ~(2022年12月31日)
http://gagaku-kyougikai.com/?p=684
№131~№269 (2023年1月8日)~(2023年12月13日)
http://gagaku-kyougikai.com/?p=2139
№270~最新号 (2024年1月11日)~
http://gagaku-kyougikai.com/?p=3875

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[7] 問合せ先・連絡先

メール gagakudayori@yahoo.co.jp
℡042-451-8898 ℡090-1538-1693
雅楽協議会 http://gagaku-kyougikai.com/
発行 雅楽協議会 ヨシ対策室 担当 鈴木治夫

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篳篥を吹く源博雅(『陰陽師 玉手匣 2』より)ⓒReiko Okano

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