『ヨシ原通信』No.119 2022年11月11日(金)

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『ヨシ原通信』No.119(2022年11月11日(金)
発行 雅楽協議会 ヨシ対策室事務局(担当 鈴木治夫)

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篳篥を吹く源博雅(『陰陽師 玉手匣 2』より)
ⓒReiko Okano
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[1] 振り返り-11
[2]「ヨシ原を考えるシンポジュウム」12月3日、4日 参加費無料
[3]「まとめの会」を開きます。11月18日(金)午後1時30分 上牧公民館
[4]『ヨシ原通信』バックナンバー
[5] 寄付のお願い
[6] 問合せ先

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[1] 振り返り-11

「つる草抜き」の準備の段階からご一緒いただいています赤對一雄さんから今年の振り返りと来年への提言を寄せていただきましたので掲載させていただきます。なお、下記からも読めます。
https://drive.google.com/drive/folders/1M4MpYYxGF_GAdzrpjayvbI6BEw6zO8YX

『「つる草抜き」植物担当としての今年の活動を振り返って』赤對一雄 (22.11.7)

2022年1月27日、妻と一緒にウオーキングの途中、春日神社の前の自販機に貼られたボランティア募集のチラシを見たのが初めてでした。正直、これで多くの人が集まるのだろうか、が最初の印象です。

現役をリタイア後、「シニア自然大学校」、「たかつき市民環境大学」に学び、鵜殿のヨシ原に侵入した、侵略的特定外来生物(植物)のナガエツルノゲイトウの駆除に当たっていた私には気になるところでした。

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(写真 ヨシ原を見て回る赤對(しゃくつい)一雄さん)

2月20日に、初めて、雅楽協議会の鈴木さんに連絡を取って、ボランティアとして妻と一緒に「つる草抜き」に参加したい旨を伝えました。

当初は、やはり、人の集まりが気掛かりで、知っている限りの自然系の団体、サークルにチラシを添付してメールを出しました。事務局を務める団体でも21名のチームを立ち上げることが出来ました。

結果的に、4月10日のスタートには、協賛の「高槻・五領の環境と子どもの未来を守る会」の皆さんの努力や、市の農林緑政課、NEXCO殿のご協力に加えて、東儀さんのミニコンサートも計画されており、驚くほどの人が集まってくれました。個人的には、2月25日の杭打ちの準備作業以来、「つる草抜き」に当たっての、植物担当としてのお世話役をさせて頂く事になりましたが、たまたま、ナガエツルノゲイトウの駆除チームを主宰される、高槻市立自然博物館の高田先生のご指導が得られることが幸いしました。なお、来年は、もう少し早く、芽生えの始まる3月末には活動を開始したいです。

また、準備の過程で、妻から、初めて色々な植物の芽生えを見る人にとって、写真などではなく、実物で示すべきだとの意見で、自宅のプランターを空けて、ターゲットの「カナムグラ」「ヤブカラシ」に「オオブタクサ」の3つの芽生えを移植し、テント脇に展示しました。これは「百聞は一見に如かず」で役に立ったようです。

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 (写真 プランターにつる草を植え 参加者への説明に使用)

今年の活動を終えて、ヨシ原を見ますと、昨年、入会権を持つ、上牧実行組合の木村さんから、雅楽協議会の鈴木さんに、つる草に覆われて、ヨシが全滅との連絡がありましたが、「つる草抜き」を行ったエリア以外は同様です。実際には、カナムグラを主犯とされた木村さんの報告のように、カナムグラが優占種となっていて、ツルの茎のトゲが強く絡みついて他の植物を圧倒しています。「つる草抜き」エリアでは、4月のカナムグラの集中駆除で、確かに1年草のカナムグラは大幅に減少しましたが、逆に、地下茎で残ったヤブガラシが7月以降繁茂し始めました。これは、太い巻きひげを絡めながら、隣のヨシをも引っ張り倒す仕業に驚きました。来年は,浅い地下茎を張っているのを引っ剥がして駆除を行うのも有効だと反省しました。

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(抜いたつる草の後片付けをする赤對さん)

また、ヨシ原は定期的な「冠水」によって、肥料分が補充されていた訳ですが、1年草なのに「大木」になるオオブタクサや、栄養分を多く吸収し、地下茎で群落となって広がるセイタカアワダチソウ等の積極的な駆除が、雅楽の篳篥(ひちりき)用のヨシの生育にとって必須だと考えます。最近は冠水も少なくなり、栄養分吸収の競争相手を減らすのは大切です。以下に主な「つる草」の駆除方法をまとめました。

●カナムグラ・・・硬く強い茎にトゲがあってヨシに強固に絡む。発芽期は早く(ヨシと同時3月下旬)成長も早い。葉はヤブガラシより大きい。1年草で種子から発芽。早期に発見次第抜いて駆除。

●ヤブガラシ・・・ツルは二股、更に二股と分岐しながら複雑に絡みつくと同時に、新たに太い巻ひげを伸ばし、近くのヨシも引っ張り込んで双方のヨシを倒伏させる。発芽期は早く(3月下旬)7月以降の夏場に大きく成長し繁茂する。地下茎が縦横に広がる多年草で、暗赤色のひょろひょろとした柔らかい芽を次々に出す。少し伸ばして茎を硬くしてから地下茎ごと抜きとる。大きく伸びたものは根元を切って、「巻きひげ」も切断する。

●オオブタクサ・・・ヨシと同じ位に高く伸びる。樹木のような固い茎は太く木質化し栄養分を多量に奪う。1年草で秋の花粉症の主犯。発芽期は早く(3月下旬)丸っこい可愛い双葉である。双葉の頃は抜きにくいので20cm位に伸ばしてから抜き取る。抜き取った株はそのまま地面に置いてマルチ代わり(遮光)にして活用する。

●セイタカアワダチソウ・・・他の植物に対し成長阻害成分を分泌して群落化。栄養分を多量に奪う。発芽期は早く、発芽した状態では地面に張り付いたようで抜きにくい。オオブタクサと同様に少し伸ばしてからだと抜き易い。ヤブガラシと同じく地下茎で増えるので地下茎ごと抜き取るのがベター。花粉症は起こさない虫媒花だが種子を実らせないように発見次第根元から刈り取る。

●クズ・・・太く強い茎と大きな重量のある葉で他の植物を覆い尽くす。発芽期は少し遅いが、地下茎、種子で繁殖し、一帯を最終的に独占して他の植物を枯らせる。太いつるを切断し、Cエリアも含めて絶対に侵入を許してはならない「つる植物」である。

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(写真 植物担当として参加者への説明をする赤對さん)

いっぽう、個人的には、「つる草抜き」活動の中で、いろいろな人達との繋がりが広がった事は印象深いことでした。加えて、知識が繋がっていく喜び、驚きも意外なことでした。鵜殿の植物を市民の方々に紹介する「自然ふれあい講座」の講師の立場で、ヨシの芽生えを「葦牙=あしかび」と言う事を鈴木さんにお伝えすると、鈴木さんが「古事記」の冒頭に、最初の神として、私に稲作をも連想させる「ウマシアシカビノヒコジ」として記載がある事、さらに、初期の製鉄に結び付く、ヨシの根に鉄成分が固着する「高師小僧」に考察を進められた事には頭が下がりました。また、妻と一緒に、初めての雅楽の演奏会に行ったのも貴重な経験です。

さて、鵜殿のヨシ原は、長年に亘り、人の手で育まれてきたもので、人と自然が関わり合い、人の生活を支えた「里山」に似た一面があります。葦簀(よしず)や燃料として換金できる「商品作物」のヨシを育てるために、人々が、つる草などを抜き取るような「手」を入れていた筈です。加えて、C14分析法によって、約3000年前に成立した鵜殿のヨシ原は、歴史的にも、また、貴重な絶滅危惧種の宝庫としても高槻市の宝です。夏の終わりには、もう、居なくなっていたと思っていた、ツバメの塒入りも切り下げ地で観察できました。篳篥用のヨシの為だけでなく、鵜殿の豊かな生態系の維持のためにも、ヨシ原焼きの継続的な実施と、火勢などをもう少し強める事なども再検討が必要かと思います。

今後の事ですが、篳篥用のヨシについては、ロープで仕切った区画割と通路を確保したエリアを、ヨシ原内の微高地に設定し、「鵜殿ヨシ原篳篥用ファーム」として一定の維持管理が出来れば良いと考えます。必要資金は、定期的、継続的な寄付や、クラウドファンディングなどで賄えればベストでしょう。

また、ヨシだけで育てるのが良いのか、或いは、枝分かれして葉を広げるオギとの共生が良いのかは、実験結果を待ちたいところですが、広がった葉の陰で、つる草の光合成を阻害するオギの役割は無視できないかも知れません。

いっぽう、雅楽の篳篥と同じく、リードを使う洋楽器のオーボエやクラリネット等については、楽器メーカー自身がフランスで、ヨシに似た、イネ科の多年草「ダンチク(暖竹)」をリードの原材料として畑作栽培しています。これは参考になると思います。  以 上

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[2]ヨシ原を考えるシンポジュウム

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下記アドレスよりチラシが読めます。
https://drive.google.com/drive/folders/1M4MpYYxGF_GAdzrpjayvbI6BEw6zO8YX

ヨシ原の「千年の歴史の終焉をどのように回避するのか、について考えを深め、意見交流をし、今後の動きにつなげてゆきたい」と下記の内容のシンポジュウムが開かれます。

多くの皆さんと共に考えていきたいと思います。無料ですので是非ご参加ください。

【1日目】
12月3日(土)午後1時30分~ 参加費無料
会場 国際日本文化研究センター(京都市西京区)

ご挨拶:劉建輝(国際日本文化研究センター教授)
伊藤謙(大阪大学総合学術博物館講師・科研代表)
司 会:深尾葉子(大阪大学人文学研究科教授)
発言者(敬称略)
〇鈴木治夫〇木村和男〇綾史郎〇田口圭介〇三好龍孝

午後5時30分より 座談会・懇談会 会食有 有料(2千円)となります

【2日目】
12月4日(日) 午前10時~ 参加費無料
本澄寺にて お話 〇高田みちよ ヨシ原へ 午後 雅楽演奏
安満遺跡公園へ移動。午後3時より遺跡見学
午後4時より講演 北島宣「案満遺跡の稲作の歴史と渡来文化」
午後5時より会食 有料(3千円程度)

【問合せ・お申込み先】
参加申し込み等の連絡先 深尾研究室 fukaoken@outlook.jp(担当:谷俊作)
★可能な方は以下のグーグルフォームを使ってお申込みください。のちほど事務局からご連絡差し上げます。https://forms.gle/2jezoXB9Vx3iBgFj9

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[3]「まとめの会」を開きます。

11月18日(金)午後1時30分 上牧公民館

「つる草抜き」初年の「まとめの会」を開きます。
来年の「つる草抜き」に向けて、良かった事、改善したほうが良い事、などなど情報を共有するとともに意見を出し合う会です。
多くの皆さまの参加をお待ちしています。

『上牧・鵜殿ヨシ原の篳篥用ヨシの再生に向けた取り組み 中間報告』(A4 20p)にまとめてあります。下記よりダウンロードするとどなたでも読むことが出来ます。
https://drive.google.com/drive/folders/1M4MpYYxGF_GAdzrpjayvbI6BEw6zO8YX

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[4]『ヨシ原通信』バックナンバー

『ヨシ原通信』を拡散していただけるとありがたいです。
『ヨシ原通信』のバックナンバーは、下記より読むことが出来ます。
http://gagaku-kyougikai.com/?p=684

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[5]寄付のお願い

「つる草抜き」の活動を続けていくための寄付をお願いしています。どうぞよろしくお願いいたします。
寄付振込先
●郵便局は
郵便振込用紙に「ヨシへ寄付」と記入頂き
[口座番号]00140‐5‐614032
[加入者名]雅楽協議会

●銀行は
三井住友銀行 田無支店
普通 4012320
雅楽協議会 鈴木治夫

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[6]問合せ先・連絡先

メール gagakudayori@yahoo.co.jp
℡042-451-8898 ℡090-1538-1693
雅楽協議会 http://gagaku-kyougikai.com

発行 雅楽協議会 ヨシ対策室事務局 担当 鈴木治夫

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