『ヨシ原通信』No.123 2022年11月20日(日)

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『ヨシ原通信』No.123 2022年11月20日(日)
発行 雅楽協議会 ヨシ対策室(担当 鈴木治夫)

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篳篥を吹く源博雅(『陰陽師 玉手匣 2』より)
ⓒReiko Okano

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[1]「まとめの会」報告
「つる草抜き」エリア以外は全滅に近い
[2]「ここ数年の鵜殿ヨシ原を振り返って」
綾 史郎(大阪工業大学名誉教授、淀川環境委員会委員)
[3]「ヨシ原を考えるシンポジュウム」
12月3日、4日 参加費無料
[4]『ヨシ原通信』バックナンバー
[5] 寄付のお願い
[6] 問合せ先

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[1]「つる草抜き」エリア以外は全滅に近い

一昨日 11月18日(金)「まとめの会」を上牧公民館で開き、25名の方々にお集りいただきました。

冒頭 上牧実行組合の木村さんより、ヨシ原はさらに危機的な状況にあり、今後について真剣に考えていく必要があると次のように訴えられました。「今日、国土交通省河川事務所にヨシの刈り取りをするための許可申請書を写真を添えて提出してきました。この下の写真を見てください。「つる草抜き」したエリア以外はもう全滅に近いです。エリア以外はほとんど(篳篥用)ヨシはありません。このような状況が今後も続いて良いものか。なんとかここを守っていくにはどのようにしたらよいか、対策を真剣に考えないといけない」と。

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(写真提供・木村和男 黄色で囲った部分が「つる草抜き」のエリアで、このエリアしか篳篥用ヨシは生育していない。手前の青いところは「つる草」(カナムグラやヤブガラシ)で覆われて、ヨシは押し倒されてしまっています。)

「つる草抜き」のエリアしかヨシ(篳篥用の陸ヨシ)が育だっていない。「ここを守っていく対策を真剣に考えていかないとならない」上牧実行組合の木村さんは強く話されました。

「緊急の対策が必要」との木村さんの訴えを受けて、いろいろな貴重な意見が出されました。

真剣な話し合いは4時過ぎまで続いても終わりませんでしたが、時間ですので来年「ヨシ原焼き」前後に再度集まることを約束して散会しました。

「まとめの会」の報告は、別の機会に書く予定です。

今年の「つる草抜き」の『報告書』(仮名)を作成します。今年の感想やご意見、来年への提言など原稿をお寄せください。締切予定12月15日。

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「つる草抜き」エリア以外は、この写真の様に「つる草」に覆われてしまいヨシは全くありません。

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[2]【綾史郎先生より「まとめの会」に向けて原稿を寄せていただきましたので、掲載させていただきます。】

「ここ数年の鵜殿ヨシ原を振り返って」
2022年11月14日
綾 史郎 (大阪工業大学名誉教授、淀川環境委員会委員)

2022年2月13日朝、私は久しぶりに鵜殿の堤防天端道路を自転車を押しながら歩いていました。2年振りのヨシ原焼きに集まった地元の人や見学の人々で天端道路はいっぱいでした。暫く途絶えていた鵜殿通いを2021年の秋、冬あたりから再開し、秋枯れの鵜殿に広がる押し倒されたヨシの上に繁茂した枯れたツル草類やそびえたつ、あるいは斜めに倒れた枯れたオオブタクサの群落など、それまでなかった光景を見るたびに、大変なことが起きつつあると感じ、何としてもヨシ原焼きを再開して欲しいと思っていました。当日、見学に来た人々の思いは皆同じことと想像されます。その中で小山弘道先生とご家族に久しぶりにお会いし、鵜殿での懐かしいことや近年のヨシ原の話をすることが出来たのは、ヨシ原焼きとの再会とともに嬉しいことでした。

私は20年ほど前から淀川河川事務所環境委員に任じられ、鵜殿との付き合いはそれから始まったのですが、私は河川工学が専門でしたから河川の水や砂の流れは分かりましたが、植物のことはほとんど知らず、鵜殿ヨシ原とその植物については同じ環境委員を務められていた小山先生からの幾度もの現地指導がそのほとんどでした。

環境委員会では篳篥ヨシのことについては立ち入らず、地元の関係者や小山先生にお任せし、それ以外のヨシ原一般を扱うのが主流で、1970年代から劣化が続く鵜殿ヨシ原の再生法として、(1)導水路の建設とそれからの給水、(2)ヨシ原の切り下げと移植の二つの方法が選択され、その実行案を検討することが任務で、わたしは主として(2)に関係していました。再生案は1990年代の後半から開始され、紆余曲折はありましたが、(1)導水路案、(2)切下げ案の二つともそれなりに成功し、極端に言えば、「まとまったヨシ原は導水路内と切下げ地にしかない」と言えそうな状況さえ、生まれたこともありました。しかし、ヨシの質についてはご承知のように双方ともに「水ヨシ」と呼ばれ、残念ながら篳篥の蘆舌には適していないことが分かっています。現在、導水路は堤防側と河川側の2筋、延長3㎞前後(著者の推測)が完成し、春から秋まで夏季の休止期間を挟み、0.55m3/sの水がポンプ揚水されていますが、導水路の下流端まで十分給水が行き渡らず、ヨシの満足な生育が見られないことやポンプの維持が課題となっています。切下げについてはこれまでに約5mの厚さでこれまでに約9ha(著者の推定)が切下げられていますが、私見ですが、淀川の年間の水量の多寡によりヨシやオギの優占度が異なってくることやヨシ・オギ以外の植生の侵入、樹林化、河川側での土砂堆積等が懸念されます。

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 (写真 導水路 2022年6月10日撮影)

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(写真 切り下げ地 2022年11月17日撮影)

導水路や切下げ地以外の約50haについては水条件が悪化したままですから、ヨシ原回復することなく、劣化が進み、すなわち、上流側ではカナムグラやオオブタクサの繁茂が進んでおり、下流側では、セイタカアワダチソウの繁茂が著しく、トネハナヤスリの衰退が懸念されています。

その他に、クズや特定外来種のアレチウリの繁茂が著しい状況です。

篳篥ヨシのこれまでの生育、回復措置については前述のようなことからこれまで私はほとんど知りませんでしたが、3月頃にメールで篳篥ヨシの窮状とツル草抜きによる再生運動の開始と東儀さんの篳篥演奏会のことを知りました。当日は午前中は淀川下流で本業のイタセンパラの保護活動の一環としての外来種駆除を行った後、鵜殿に向かいました。ツル草抜き作業は午前中で終わったので本澄寺での東儀さんの演奏会に行きましたが、東儀さん親子の演奏とともに多くの熱心な観客、お世話をして頂いている多くの関係者や地元の方々の熱意に感動しました。その後は、ツル草抜き区域での作業にも参加しましたし、鵜殿の観察時に鈴木さんと何度かお話しする機会があり、7月、8月、9月と本格的に参加し、ツル草の脅威を日々、目で見て実感し、ツル草抜きの効果についてもしっかりと体感できました。遠く東京から毎月長期間高槻市まで出張され、作業を取りまとめ、指揮をして頂きました鈴木さんや一緒に作業に参加していただいていた皆さまに深く感謝申し上げます。

今年度のツル草抜き作業の成果について結果が出てくる頃と思いますが、良い結果がでるものと信じています。膨大な人力と経費、時間を掛けましたが、上手く行って、来年に繋げることが出来るでしょう。ヨシの地下茎も大きく太くなりますから、来年は今年よりさらに良くなるはずです。今年の8月には、ツバメの塒入りの状況を見に行きました。良いヨシ原が出来ているかどうかは、人間よりツバメに聞く方が正しいというものです。ツバメはツル草抜き区域の篳篥ヨシと切下げ地のヨシ原の2か所を塒として利用していました。ツル草抜き区はわずかな利用でしたが、昨年壊滅したヨシ原がヨシ原として回復していることをツバメが認めていることを知り、大変嬉しく思いました。切下げ地の塒入りはコンサルタントの方から聞いていましたが、鈴木さんと赤對さんのビデオは感激的でした。往年の塒入りのようでした。

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(写真 「つる草抜き」エリアのつばめの塒入り 2022年8月23日 撮影 綾史郎)

(つばめの塒入り 動画 アドレスは下記)


https://www.youtube.com/watch?v=-JAbbA5zDcs

今年の高茎草の花穂の色合いから判断して、まともなヨシ原はツル草抜き区2ha、切下げ地9haしかないのが現状と思います。導水路のヨシ原はわずかにオギが残りましたが、壊滅状態です。散在するヨシ(調査区?)、オギ、セイタカヨシを除いて、ほとんどが、カナムグラ、ヤブガラシ、アレチウリ、クズに覆われ、巨大なオオブタクサ林が茂っています。特に下流側にオオブタクサや最強のツル草クズが目立ます。どんな対策があるのか、途方に暮れてしまいます。先月、植物の観察会に参加しましたが、ツル草や外来種ほとんどですが、よく探して見れば、伝統の秋の野草がかすかに残り、花も咲かしていました。大事にしたいです。

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(綾 史郎 氏)

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[3] ヨシ原を考えるシンポジュウム

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下記アドレスよりチラシが読めます。https://drive.google.com/drive/folders/1M4MpYYxGF_GAdzrpjayvbI6BEw6zO8YX

ヨシ原の「千年の歴史の終焉をどのように回避するのか、について考えを深め、意見交流をし、今後の動きにつなげてゆきたい」と下記の内容のシンポジュウムが開かれます。
多くの皆さんと共に考えていきたいと思います。無料ですので是非ご参加ください。

【1日目】
12月3日(土)午後1時30分~ 参加費無料
会場 国際日本文化研究センター(京都市西京区)

ご挨拶:劉建輝(国際日本文化研究センター教授)
伊藤謙(大阪大学総合学術博物館講師・科研代表)
司会:深尾葉子(大阪大学人文学研究科教授)
発言者(敬称略)
〇鈴木治夫〇木村和男〇綾史郎〇田口圭介〇三好龍孝

午後5時30分より 座談会・懇談会 会食有 有料(2千円)となります

【2日目】
12月4日(日) 午前10時~ 参加費無料
本澄寺にて お話 〇高田みちよ ヨシ原へ 午後 雅楽演奏
安満遺跡公園へ移動。午後3時より遺跡見学
午後4時より講演 北島宣「案満遺跡の稲作の歴史と渡来文化」
午後5時より会食 有料(3千円程度)

【問合せ・お申込み先】
参加申し込み等の連絡先 深尾研究室 fukaoken@outlook.jp(担当:谷俊作)
★可能な方は以下のグーグルフォームを使ってお申込みください。のちほど事務局からご連絡差し上げます。https://forms.gle/2jezoXB9Vx3iBgFj9

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[4]『ヨシ原通信』バックナンバー

『ヨシ原通信』を拡散していただけるとありがたいです。
『ヨシ原通信』のバックナンバーは、下記より読むことが出来ます。
http://gagaku-kyougikai.com/?p=684

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[5] 寄付のお願い

「つる草抜き」の活動を続けていくための寄付をお願いしています。どうぞよろしくお願いいたします。
寄付振込先
●郵便局は
郵便振込用紙に「ヨシへ寄付」と記入頂き
[口座番号]00140‐5‐614032
[加入者名]雅楽協議会

●銀行は
三井住友銀行 田無支店
普通 4012320
雅楽協議会 鈴木治夫

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[6] 問合せ先・連絡先

メール gagakudayori@yahoo.co.jp
℡042-451-8898 ℡090-1538-1693
雅楽協議会 http://gagaku-kyougikai.com

発行 雅楽協議会 ヨシ対策室事務局 担当 鈴木治夫

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