『ヨシ原通信』No.228 2023年8月13日(日)

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『ヨシ原通信』No.228 2023年8月13日(日)
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[1] キツネノカミソリが咲き始めました。
[2] 篳篥のヨシをセイタカヨシ(西湖のヨシ)と間違えた 牧野富太郎-➃
[3]「つる草抜き」予定
[4] 寄付のお願い
[5]『ヨシ原通信』バックナンバー
[6] 問合せ先

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[1] キツネノカミソリが咲き始めました。

去年は8月前半に咲き始めたので、「まだ咲かないかな」と思っていましたら、角南さんから「キツネノカミソリが、去年と同じところで咲いています」と連絡を頂きました。

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(キツネノカミソリ 写真は昨年のもの 2022年8月8日 )

とても珍しい花で東京都や和歌山県などは絶滅危惧種に指定されています。

名前も変わっていますね。キツネノカミソリは、どうも突然に現れて美しい花が咲くのだそうです。その様子が昔から狐に化かされているように感じ、また炎のような花は「狐火」に見立てられたようです。

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(キツネノカミソリ 2022年8月24日)

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[2] 篳篥のヨシをセイタカヨシ(西湖のヨシ)と間違えた 牧野富太郎-➃

NHKの朝のドラマで主人公のモデルとなった植物学者の牧野富太郎は、篳篥の蘆舌のヨシを調べるために鵜殿のヨシ原に昭和12年(1937年)に8月15日と10月19日の2回訪れていますが、篳篥用のヨシをセイタカヨシと間違えてしまいます。

なぜ間違えてしまったのか、調べてみると江戸時代の『本草綱目啓蒙』小野蘭山(1803年)の中に「篳篥の義嘴(した)に作るこのヨシは、中国の蘇頌の説の碧蘆というものである」とあり、誤解を招くような、誤った書き方になっていたこと。これについては、前回(『ヨシ原通信』№220 2023.7.27)で触れました。

今回は、この『本草綱目啓蒙』小野蘭山(1803年)より27年余り後、小野蘭山の教え子でもある岩崎灌園(1786-1842)が出版した『本草図譜』(文政11年1828年、明治になる40年ほど前)を見ていきましょう。

『本草図譜』は岩崎灌園が各地に出向き写生した2,000種もの植物図に解説を添えた書で、日本で最初の本格的な植物図鑑 と言われている。小野蘭山の『本草綱目啓蒙』には図は書かれていなかった。

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『本草図譜』表紙 92冊の中の「蘆」の書かれている冊子の表紙

(国会図書館蔵 デジタルコレクションより 以下同じ。https://dl.ndl.go.jp/pid/2550779/1/1

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『本草図譜』目次 該当する部分を拡大してみます。

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蘆 (ろ) あし 十 一種 うどののよし 十一

目次拡大

目次に「蘆 あし」の項とは別に「一種 うどののよし」と記されていて、蘆とは別の種として「うどののよし」があると目次でも分かるようにしている。

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『本草図譜』より 蘆(ろ) あし、よし のカラーで印刷されているページ。

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文字の部分の拡大図です。

変体仮名で書いてあるので現代仮名遣いにして、意訳してみましょう。(訳は私ですので、間違いがあるかもしれません)

「蘆(ろ)  あし 和名鈔

又 よし 摂州では ともいふ 春月 宿根より生ず 水澤の地に 多し。

初生(しょせい)竹筍(たけのこ)の如くに 小児好んで食ふ 清商人は煮て食す。

長ずれば高(たか)さ一丈余 竹に似て枝なく、軟なり。

竹葉に似て長し穂は、芒(ぼう) すすきに似て 肥大紫褐色、後白色に変ず。又 葉、左右へ互生せずして一方のみ生ずるを片葉(かたは)のよしといふ。別種に非ず」

蘆根(あしのね) [ヨシの根の図の横に書いてある漢字とふりがな]

意訳

蘆(ろ) 『和名鈔』(『和名類聚抄(わみょうるいじゅうしょう)』平安時代中期に書かれた辞書)には和名「あし」と書かれている。

また摂州(鵜殿村を含む大阪北部など)では、「よし」とも呼んでいる。 春に宿根 地下茎より生えてきて、川辺などの地に多く生える。初めは筍(たけのこ)の様で、子供たちが好んで食べる。清の商人は煮て食べている。

秋になると高さ一丈「3m3㎝」余に成長する。竹に似て枝は無く軟らかい。竹の葉に似ている長い穂は、芒(ぼう)ススキに似ていて、大きくて紫褐色で、後に白色に変わる。又 葉は左右へ互生せずして一方のみ生ずるのを片葉(かたは)ノヨシと呼ぶが、別の種類ではない。

この岩崎灌園の文章から分かることを少し書き抜きしてみます。

〇ヨシの高さは1丈(3m)余りとある。この頃のヨシは1丈(3m)余りが普通だったとすれば、今「つる草抜き」エリアのヨシは4m~5mまでに伸び、太さは12㎜となる。太さは茎丈の高さにある程度比例するようなので、今の篳篥の蘆舌のヨシは、江戸時代の岩崎灌園の思っているヨシの茎丈より大分高くなる。

〇「あし」と「よし」の呼び名について、平安時代は『和名類聚抄』に書いてあるように「あし」と呼び、『本草図譜』の書かれた江戸時代後期の摂州では「よし」と呼んでいると分かる。ではいつ頃から「よし」と呼ぶようになったのかを調べてみると江戸時代前半(1690年)の『楽家録』には、篳篥用のヨシについて「蘆」と書いて「ヨシ」とルビが振られているので、江戸時代前半、摂津(摂州)鵜殿の地域ではすでに「ヨシ」と呼んでいたことがわかる。

〇ヨシの穂が「白色に変わる」というのが気になる。(オギの穂は白色になり、ヨシは茶色になる)

次のページには、篳篥の蘆舌に使用するヨシ「うどののよし」について、「西湖ノヨシと同じ」と書いてあります。

このページは次回に

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[3]「つる草抜き」予定

8月、9月の「つる草抜き」
第8クール 8月21日(月)~8月24日(木)  午前8時~午前11時
第9クール 9月11日(月)~9月14日(木)  午前8時~午前11時
(なお雨などにより中止の場合、作及び業の進み具合で日程の変更があります。)
駐車場はありません。

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[4]  寄付のお願い

「つる草抜き」の活動を続けていくための寄付をお願いしています。

寄付振込先
●郵便局は
郵便振込用紙に「ヨシへ寄付」と記入頂き
[口座番号]00140‐5‐614032
[加入者名]雅楽協議会

●銀行は
三井住友銀行 田無支店
普通 4012320
雅楽協議会 鈴木治夫

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[5]『ヨシ原通信』バックナンバー

『ヨシ原通信』を拡散していただけるとありがたいです。
『ヨシ原通信』のバックナンバーは、下記より読むことが出来ます。
http://gagaku-kyougikai.com/?p=2139

これまでに配布しました資料などは下記のアドレスから見ることがます。
https://drive.google.com/drive/folders/1M4MpYYxGF_GAdzrpjayvbI6BEw6zO8YX

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[6] 問合せ先・連絡先

メール gagakudayori@yahoo.co.jp
℡042-451-8898 ℡090-1538-1693
雅楽協議会 http://gagaku-kyougikai.com
発行 雅楽協議会 ヨシ対策室 担当 鈴木治夫

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篳篥を吹く源博雅(『陰陽師 玉手匣 2』より)ⓒReiko Okano

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