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『ヨシ原通信』No.229 2023年8月14日(月)
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[1] 篳篥のヨシをセイタカヨシ(西湖のヨシ)と間違えた 牧野富太郎-⑤
[2]「つる草抜き」予定
[3] 寄付のお願い
[4]『ヨシ原通信』バックナンバー
[5] 問合せ先
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[1] 篳篥のヨシをセイタカヨシ(西湖のヨシ)と間違えた 牧野富太郎-⑤
「うどののよし」
『本草図譜』の「蘆 あし よし」のページについては、前号に書きましたので、今回は「一種 うどののよし」と目次に項目が立てられているページを見ていきましょう。
(目次の「蘆 あし 十」「一種 うどののよし 十一」の箇所は前回添付しました。)
「一種 うどののよし」のページです。
(国会図書館蔵 デジタルコレクションより 以下同じ。https://dl.ndl.go.jp/pid/2550779/1/1
文章の箇所を拡大してみました。赤線は私が引きました。赤線部分は「一種 うどののよし」「鵜殿村」「篳篥」「義嘴」「西湖」とあり、それぞれに「うどのむら」「ひちりき」「した」「せいこ」とルビが振ってあります。
変体仮名なので、現代仮名にし、意訳したいと思います。(前号同様私の訳です)
一種 うどののよし
摂州島上郡鵜殿村の堤(つつみ)に生(せう)ず。
名産(めいさん)なり、葉(は)は蘆(あし)に似て狭く長く深緑色(こきみどりいろ)なり。
暖地(だんち)にては冬も 凋(しぶ)まず、其幹(そのみき)
一丈余、二年を経て枝(えだ)を生じ、三四年にして枯る。
根に近き處(ところ)を切採(てきりとり)て篳篥(ひちりき)の義嘴(した)に作(つく)る。
此(この)もの又房州(ぼうしう)にもあり だんちく と云 又 西湖(よいこ)の蘆(よし)と称(せう)せるもの同物なり。
蘇頌の説に深碧色(しんへきしょく)ものこれを碧蘆(へきろといふ)とあるこれなり。
意訳
うどののよし(ウドノノヨシ)
摂州島上郡鵜殿村の堤にウドノノヨシが生えています。
名産品となっています。
葉は蘆(アシ・ヨシ)の葉に似て、狭く長く深緑色です。
暖地[暖かい地方]では、冬でも枯れないで、その幹丈は、一丈 [3m3㎝] 余に成長し、二年を経つと枝が生え、三、四年にして枯れます。
このヨシの根に近い所を切採して、篳篥の義嘴(した)に作ります。
このようなヨシは、房州(現在の千葉県南部)にもあり「だんちく」と云います。
又 西湖(せいこ)の蘆(よし)[西湖ノヨシ・セイコノヨシ]と称しているものと同じ種類のヨシです。
蘇頌(1020年~1101年 北宋の本草学者)の『證類本草』の説に「深碧色のこれを碧蘆という」と書かれている蘆(アシ・ヨシ)はこのヨシです。
さらにくだいて書くと、前ページの蘆(アシ・ヨシ)の別の種類に「ウドノノヨシ」というのがあり、雅楽で使われる楽器 篳篥の蘆舌(義嘴(した))に加工されますので鵜殿の名産品となっています。
この「ウドノノヨシ」の葉は、普通のヨシの葉と似ていて、狭く長く深緑色です。
このようなヨシは、千葉県南部にも生えており「ダンチク・暖竹」とも言います。
「西湖ノヨシ」と呼んでいるヨシも同じものです。
北宋の本草学者蘇頌(1020年~1101年)の『證類本草』に「碧蘆」とあるのもこのヨシの事です。
江戸後期に始めての図鑑『本草図譜』を書いた岩崎灌園は、篳篥の蘆舌に使用するヨシについて千葉県では「ダンチク」と呼ばれ、また「西湖ノヨシ」とも呼ばれ、『證類本草』にある「碧蘆」と同じと紹介しました。
昭和の初期、雅楽は一般向けには全くと言ってよい程演奏されていません。今では信じられませんが、家で練習していると「うるさい」と言って石を投げられたという逸話が残っているほどです。
雅楽は聞いたことも無い、ましてや篳篥の蘆舌は見たことも無いだろう牧野富太郎博士としたらこの文章を信用するしかなかったのだろうと思われます。
ここで「西湖ノヨシ」と「ダンチク」について簡単に書いてみましょう。
「西湖のヨシ(セイコノヨシ)」は、鵜殿では、セイタカヨシとも呼ばれ鵜殿のヨシ原でも生えています。
(『ヨシ原通信』№214参照)
この写真は「つる草抜き」エリアの近くで生えているセイタカヨシ(西湖ノヨシ)です。
茎を切ってみると肉が厚いことが分かります。
セイタカヨシは肉厚で、柔らかい。茎の下から20㎝余りの断面 (2023年7月11日)
篳篥の蘆舌に使用するには、肉が厚いと中は柔らかくなります。篳篥の蘆舌は硬いものが良いので肉が厚いと使用できないのです。
下の写真の牧野富太郎の手に持っているヨシは、セイタカヨシ(西湖ノヨシ)です。
(写真 兵庫県立 人と自然の博物館「植物学者 牧野富太郎 写真展 ~川﨑正悦氏アルバムより~」「牧野富太郎、高槻市鵜殿のヨシ原にたたずむ」より )
次はダンチクの説明ですが、これは分かりづらいのです。
ダンチクは、イネ科の多年草で、ヨシに似ています。高さも4m程になり、太さも太くなり、茎の肉も厚いです。
(ダンチク ウイッキペディアより)
それに、クラリネット、サックス、オーボエなどのリードは、ダンチクで作ります。篳篥に似ているドゥドゥク、メイ、パーラーバーン、中国の管子などのリードもダンチクで作ります。また篳篥が大陸から日本に伝わった奈良時代のころのリード(蘆舌)は、ダンチクを使用していたようです。
リードにダンチクを使用するのが、一般的なのです。
ところが、日本に篳篥が伝わり奈良時代は蘆舌にダンチクを使用していたのですが、平安時代になってから鵜殿のヨシに変えて作り、現在まで伝えてきています。なぜ変えたのかについては『ヨシ原通信』で書いているところです。
(『ヨシ原通信』「篳篥の不思議と神秘」№107、108、110、111、113、114、115、116、118、131、132、133、135)
(ダンチクの学名はArundo donax アルンド・ドナクスで、篳篥のヨシの学名はPhragmites australisフラグマイト・オーストラリスです。ダンチクとヨシとは異なる植物です。ややこしいのです。)
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[2]「つる草抜き」予定
8月、9月の「つる草抜き」
第8クール 8月21日(月)~8月24日(木) 午前8時~午前11時
第9クール 9月11日(月)~9月14日(木) 午前8時~午前11時
(なお雨などにより中止の場合、作及び業の進み具合で日程の変更があります。)
駐車場はありません。
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[3] 寄付のお願い
「つる草抜き」の活動を続けていくための寄付をお願いしています。
寄付振込先
●郵便局は
郵便振込用紙に「ヨシへ寄付」と記入頂き
[口座番号]00140‐5‐614032
[加入者名]雅楽協議会
●銀行は
三井住友銀行 田無支店
普通 4012320
雅楽協議会 鈴木治夫
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[4]『ヨシ原通信』バックナンバー
『ヨシ原通信』を拡散していただけるとありがたいです。
『ヨシ原通信』のバックナンバーは、下記より読むことが出来ます。
http://gagaku-kyougikai.com/?p=2139
これまでに配布しました資料などは下記のアドレスから見ることがます。
https://drive.google.com/drive/folders/1M4MpYYxGF_GAdzrpjayvbI6BEw6zO8YX
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[5] 問合せ先・連絡先
メール gagakudayori@yahoo.co.jp
℡042-451-8898 ℡090-1538-1693
雅楽協議会 http://gagaku-kyougikai.com
発行 雅楽協議会 ヨシ対策室 担当 鈴木治夫
篳篥を吹く源博雅(『陰陽師 玉手匣 2』より)ⓒReiko Okano
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