『ヨシ原通信』No.243 2023年9月7日(木)

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『ヨシ原通信』No.243 2023年9月7日(木)
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[1] 来週9月11日(月)朝8時より 第9クールの「つる草抜き」
[2] 篳篥のヨシをセイタカヨシ(西湖のヨシ)と間違えた 牧野富太郎-⑫
[3]「つる草抜き」予定
[4] 寄付のお願い
[5]『ヨシ原通信』バックナンバー
[6] 問合せ先

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[1] 来週9月11日(月)朝8時より

第9クールの「つる草抜き」が始まります。
今のところ天気予報では雨ではありませんので、予定通りと思います。
まだまだ暑い日が続きそうです。暑さ対策、熱中症、ケガ等に十分に注意しながら行いたいと思います
水などは多めに持参ください。トイレはありません。駐車場もありません。
どうぞよろしくお願いいたします。

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[2] 篳篥のヨシをセイタカヨシ(西湖のヨシ)と間違えた

牧野富太郎-⑫

牧野富太郎は、「私は久しい以前からこの鵜殿ノヨシを以て西湖ノヨシだと信じていた」(「篳篥の舌を作る鵜殿ノヨシ」)と書いています。即ち牧野富太郎は、「篳篥用のヨシは太くて硬いヨシだから、西湖ノヨシ(鵜殿ではセイタカヨシともいう)を使用していると思い込んでいた。古い本にもそのように書いてある」と。

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(昭和12(1937)年8月15日 セイタカヨシ、西湖ノヨシを手に喜ぶ牧野富太郎。
写真提供 兵庫県立 人と自然の博物館「植物学者 牧野富太郎 写真展 ~川﨑正悦氏アルバムより~」「牧野富太郎、高槻市鵜殿のヨシ原にたたずむ」より )

何故そのように思い込み、そして後にその間違いに気づいたかについて、本人は次のように書いています。

「私は久しい以前からこの鵜殿ノヨシを以て所謂西湖ノヨシだと信じていた。それは岩崎灌園の『本草図譜』巻十六に出ている図説に誤まられたもので、この『図譜』では明らかに西湖ノヨシを鵜殿ノヨシと同物にしているが、これは固より灌園の思い違い出会ったのである。鵜殿ノヨシの産地の土堤には同じく西湖ノヨシも生えているから、当時誰かがそれを鵜殿ノヨシと間違えて遠くその苗を江戸の灌園に送致し、そこで灌園が『図譜』へこれを鵜殿ノヨシとなして書いたものでありはしなかったかと想像する、『図譜』にはそれを一にダンチクと云うのだと書いていれど、ダンチクは一にヨシタケと称して全く別種である。」(牧野富太郎「篳篥の舌を作る鵜殿ノヨシ」(『續牧野植物随筆』鎌倉書房p186)

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(「篳篥の舌を作る鵜殿ノヨシ」(『續牧野植物随筆』鎌倉書房) p185.186)

では、牧野富太郎が間違いのもとになったという岩崎灌園の『本草図譜』巻十六を見てみましょう。

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牧野富太郎が間違いのもとになったという岩崎灌園『本草図譜』の「一種 うどののよし」
(国会図書館蔵 デジタルコレクションより 以下同じ。https://dl.ndl.go.jp/pid/2550779/1/1)

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変体仮名も含みますので現代仮名にし、意訳しました。

(『ヨシ原通信』№229で「凋まず」のるびを「しぶまず」としましたが「しぼまず」ですと角南さんより教えていただきました。ありがとうございます)
赤線は私が引きました。

「一種 うどののよし
摂州島上郡鵜殿村の堤(つつみ)に生(せう)ず。
名産(めいさん)なり、葉(は)は蘆(あし)に似て狭く長く深緑色(こきみどりいろ)なり。
暖地(だんち)にては冬も 凋(しぼ)まず、其幹(そのみき)
一丈余、二年を経て枝(えだ)を生じ、三四年にして枯る。
根に近き處(ところ)を切採(きりとり)て篳篥(ひちりき)の義嘴(した)に作(つく)る。
此(この)もの又房州(ぼうしう)にもあり だんちく と云 又 西湖(よいこ)の蘆(よし)と称(せう)せるもの同物なり。
蘇頌の説に深碧色(しんへきしょく)ものこれを碧蘆(へきろといふ)とあるこれなり。 」

意訳

「 うどののよし(ウドノノヨシ)

摂州島上郡鵜殿村の堤にウドノノヨシが生えています。
名産品となっています。
葉は蘆(アシ・ヨシ)の葉に似て、狭く長く深緑色です。
暖地[暖かい地方]では、冬でも枯れないで、その幹丈は、一丈 [3m3㎝] 余に成長し、二年を経つと枝が生え、三、四年にして枯れます。
このヨシの根に近い所を切採して、篳篥の義嘴(した)に作ります。
このようなヨシは、房州(現在の千葉県南部)にもあり「だんちく」と云います。
又 西湖(せいこ)の蘆(よし)[西湖ノヨシ・セイコノヨシ]と称しているものと同じ種類のヨシです。
蘇頌(1020年~1101年 北宋の本草学者)の『證類本草』の説に「深碧色のこれを碧蘆という」と書かれている蘆(アシ・ヨシ)はこのヨシです。さらにくだいて書くと、前ページの蘆(アシ・ヨシ)の別の種類に「ウドノノヨシ」というのがあり、雅楽で使われる楽器 篳篥の蘆舌(義嘴(した))に加工されますので鵜殿の名産品となっています。

この「ウドノノヨシ」の葉は、普通のヨシの葉と似ていて、狭く長く深緑色です。このようなヨシは、千葉県南部にも生えており「ダンチク・暖竹」とも言います。「西湖ノヨシ」と呼んでいるヨシも同じものです。北宋の本草学者蘇頌(1020年~1101年)の『證類本草』に「碧蘆」とあるのもこのヨシの事です。」

牧野富太郎が間違えたもとになった岩崎灌園『本草図譜』を引用しました。

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上牧・鵜殿ヨシ原で生育するセイタカヨシ(西湖ノヨシ)
葉が斜め上にほとんど曲がらないのが特徴です。
普通のヨシに比べると茎の太いのが多い。茎に肉厚があり篳篥用ヨシには使用できない。

(2023.7.11)

(つづく)

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[3]「つる草抜き」予定

第9クール 9月11日(月)~9月14日(木) 午前8時~午前11時
(なお雨などにより中止の場合、及び作業の進み具合で日程の変更があります。)
駐車場はありません。

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[4] 寄付のお願い

「つる草抜き」の活動を続けていくための寄付をお願いしています。

寄付振込先
●郵便局は
郵便振込用紙に「ヨシへ寄付」と記入頂き
[口座番号]00140‐5‐614032
[加入者名]雅楽協議会

●銀行は
三井住友銀行 田無支店
普通 4012320
雅楽協議会 鈴木治夫

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[5]『ヨシ原通信』バックナンバー

『ヨシ原通信』を拡散していただけるとありがたいです。
『ヨシ原通信』のバックナンバーは、下記より読むことが出来ます。
http://gagaku-kyougikai.com/?p=2139

これまでに配布しました資料などは下記のアドレスから見ることがます。
https://drive.google.com/drive/folders/1M4MpYYxGF_GAdzrpjayvbI6BEw6zO8YX

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[6] 問合せ先・連絡先

メール gagakudayori@yahoo.co.jp
℡042-451-8898 ℡090-1538-1693
雅楽協議会 http://gagaku-kyougikai.com
発行 雅楽協議会 ヨシ対策室 担当 鈴木治夫

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篳篥を吹く源博雅(『陰陽師 玉手匣 2』より)ⓒReiko Okano

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