『ヨシ原通信』No.305 2024年5月24日(金)

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『ヨシ原通信』No.305 2024年5月24日(金)
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[1]「つる草抜き」を考える-③
伝統的手法 「ヨシ刈」「草刈り」「草抜き」「つる草抜き」
[2]「つる草抜き」今後の日程
[3]『篳篥用ヨシの再生へ』活動記録 冊子発行
[4] 篳篥の蘆舌用ヨシの購入について
[5] 寄付のお願い
[6]『ヨシ原通信』バックナンバー
[7] 問合せ先

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[1]「つる草抜き」を考える-③

伝統的手法 「ヨシ刈」「草刈り」「草抜き」「つる草抜き」

上牧・鵜殿ヨシ原の篳篥用ヨシが全滅したのが2021年秋でした。それから2022年(約4000㎡)、2023年(約7000㎡)のエリアを決めて「篳篥用ヨシ再生」へ「つる草抜き」に取組み、現在は3年目に入っています。

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一昨年2022年9月 「つる草抜き」エリア(4000㎡)のヨシ原 2000本弱の篳篥用ヨシを採取

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昨年2023年6月 昨年6月の「つる草抜き」エリア(7000㎡)のヨシ原

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今年2024年5月 今年5月、つる草抜きエリア(7000㎡)を散策する子供達

今年もいろいろな花が咲き、オオヨシキリやつばめも飛んでいます。

写真を見ていただければ分かるように、ヨシが真っすぐに伸びて篳篥用ヨシが再生されてきています。

2年続けて「つる草」(カナムグラ、ヤブガラシなど)を抜くことによって、今年は昨年に比べてもつる草は激減し、確実に篳篥用ヨシを増やせそうです。

(「つる草抜き」にご参加いただいている多くの方々にお礼いたします。ありがとうございます)

このような中で「(カナムグラなどつる草の除草に)表土を50㎝余り掘削したら」という意見が寄せられたので、「表土を掘削(削り取る)」とどのようになるのかを『ヨシ原通信』№301、302(「つる草抜き」を考える)に書きました。

寄せられた意見のようにもし「表土を掘削する」と、⓵カナムグラなどの根や種だけでなく、ヨシの根や地下茎も剥いでしまう。⓶表土の軟らかい土も取り除いてしまうので、カナムグラは除草できたとしてもヨシも激減してしまう、ことが分かりました。ですから篳篥用ヨシが再生できている「つる草抜き」エリアで「表土を掘削」することは考えられません。

ヨシが激減、「保全」は「水ヨシ」

そもそもヨシが減り続けたのは、1970年代からで国交省(当時は建設省)は、⓵導水路対策(1996年~現在も継続中) ⓶切り下げ地対策(実験1999年~2003年、対策2005年~継続中※)などの対策が取られてきました。

※『鵜殿ヨシ原保全の取り組みについて』国交省淀川河川事務所 平成27(2015)年10月21日

https://www.kkr.mlit.go.jp/river/kankyou/tashizen/qgl8vl00000063vf-att/06.pdf

『鵜殿ヨシ原保全の取り組みについて』国交省淀川河川事務所 令和5(2023)年20月25日

https://www.kkr.mlit.go.jp/river/kankyou/tashizen/or2riv000001sbxz-att/No.3.pdf

ここにある「導水路」「切り下げ地」で「保全」できるのは「水ヨシ」で、「陸ヨシ」である「篳篥用ヨシ」ではありません。ここで「水ヨシ」との関係についても検討しておかねばなりませんが、その前に、昔はどのような方法で、ヨシ原に人が係わっていたかを見ておきたいと思います。

「蘆刈」は奈良時代『万葉集』にも

ヨシ原の森林化を防いだ 「半自然草原」「里草地」

ヨシは昔から建築資材や燃料として重宝がられており、『万葉集』にも「葦苅」が詠まれています。

(※『万葉集』(巻20-4459)「葦苅りに堀江漕ぐなる 楫(かじ)の音は大宮人の皆聞くまでに」)

『万葉集』の書かれた奈良時代にもヨシ刈が行われていました。

平安時代に書かれた『大和物語』(148段『蘆刈』)には、ヨシを刈り、売り歩き生計をたてている農民が描かれています。平安時代或いはもっと昔からヨシを刈取り、商売していた人がいたようです。

ヨシ原のような草原は、何も手を加えない自然のままでは、森林へと移り変わってしまうといいます。ですからヨシ原は昔から人が手を入れ、守り続けてきた事を示してもいます。「蘆刈・ヨシ刈」することによってヨシ原をヨシ原として維持されてきた。だからヨシ原の森林化を防ぐこともできていたといえましょう。※

(※『草原と日本人』増補版 2019年 築地書館p122

「日本の温暖湿潤な気候では、草原が長期にわたって成立することは自然状態ではむずかしく、山焼きや採草をおこなうなど人間が手を加えなければ、草原は森林へと移り変わってしまう。」

※『火入れと利用が守ってきた草原の生態系』 https://satokouen.jp/downloads/journal/07_01.pdf

「降水量が多く温暖な日本では、草木群落はやがて森林群落へと推移していく」)

上牧・鵜殿ヨシ原は明治維新まで烏丸(からすまる)家の領地だった。幕府直営の地ではヨシ刈も禁じられるところもあったようだが、上牧・鵜殿のヨシ原は烏丸家(貴族・公卿)の領地だったのでヨシ刈が認められていたといいます。また良質のヨシは、篳篥の蘆舌の材料として宮廷へ献上されて、税が免除されたという特別な地でもありました。

鵜殿のすぐ上流の上牧では、貴族の放牧場であったといいます。馬・牛は、軍事ばかりでなく通信、運搬などにも使用される大切な動物であり、草は馬や牛の飼い草として大量に必要でもありました。

遅くとも平安時代からは、この上牧・鵜殿は、ヨシが生い茂り、馬・牛が育てられ、良質の篳篥用のヨシを献上することで税も免除されるという特別の保護を受けていた地域で、この地域の人々にとって無くてはならない、生活に密接に結びついた地であっただろうと思われます。

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(江戸時代の上牧 『淀川両岸一覧』より 上牧)

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(江戸時代の鵜殿 『淀川両岸一覧』より 鵜殿)

ところが江戸から明治に変り、明治時代以降、淀川は大きな被害をもたらす洪水が頻発し、淀川は「改修」されていきます。『導水による鵜殿ヨシ原の保全・再生に関する研究』(綾史郎 大阪講義用大学ほか2012年)によりますと「淀川では1874(明治7)年に始まる淀川修繕工事から淀川水系河川整備計画(2009年3月)まで続く河川改修工事の中で、二大ヨシ原(鵜殿ヨシ原・向島ヨシ原)はその影響を受け、変化してきた。この工事の中で淀川の河床低下が進んでいることがわかる。この河床低下により乾燥化が進み、ヨシの生育環境が悪化した」と指摘しています。

(※『導水による鵜殿ヨシ原の保全・再生に関する研究』綾史郎ほか 2012年 土木学会第67回年次学術講演会 http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2012/67-02/67-02-0112.pdf

どのくらい水面が下がったかというと「高浜では明治初め以降、現在までの合計5.3mの平水位の低下が生じています」(『篳篥用ヨシの再生へ』p22 綾史郎 雅楽協議会2024年)という。

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淀川水位の表 ※作成 綾史郎 大阪工業大学名誉教授

(「篳篥用ヨシの再生へ」雅楽協議会 2024年 p22、裏表紙 表より)

この表上を見ますと1920年(大正時代)から水位が下がり続け、1993(平成5)年ぐらいまで続いていることが分かります。

地元婦人会らよる「ツル草抜き」 伝統的手法

昭和も戦後となり地元の人の話しによると「1955年までは毎年5~6月になると、2、3日ヨシ原が水につかり、雑草はあまり生えなかったが、冠水しなくなると、ヨシの育ちが悪くなるばかりでなく、セイタカアワダチソウやつる草がすごい勢いで繁茂し始めた」(「鵜殿のヨシ原」高槻公害問題研究会発行1981年 p9)という。

そこでつる草繁茂の対策として「村の婦人会などが出て2年ほど「ツル草抜き」を行ったが効果もなく中断」(同上p9)したといいます。(現在私たちが使用している「ツル草抜き」という言葉は地元の方々が使い始めた言葉を使わせていただいています)

この時の「つる草抜き」は、ヨシ原全体の「つる草」を相手にしたと推測でき、広すぎて「効果」が現れなかったと思われます。

その後のヨシ原はさらに悪化し、1979年から高槻公害問題研究会などの市民と高槻市などが連携し「つる草抜き」を始めました。(詳しくは『自然観察会ニュース 鵜殿のヨシ原』高槻公害問題研究会発行1981年。『鵜殿のヨシ原 保全対策調査研究報告書』高槻市発行 1985年をご覧ください)

1979年は400㎡、1981年から1600㎡の「実験区」をエリアとして「つる草抜き」が5年余り続けられ、それはみごとにヨシを再生させる実績を残されました。

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写真 1979年から始まった高槻公害問題研究会などによる「つる草抜き」(『鵜殿のヨシ原』p31より)

この「つる草抜き」について6年後の1985年に高槻市が発行した『鵜殿のヨシ原保全対策調査報告書』には、この実験を高く評価し次のように書いています。

「これまで提言されたいかなる良案よりも(人手によるカナムグラ除去は)実現可能で、しかも確実な方法であることは事実である」(同p19) 「カナムグラの抜き取り作業の成果がいかにおおきいものであったか、改めて評価する必要がある」(同p22) 「カナムグラに覆われた場所で、抜き取りと刈取りを併用することによって、ヨシ原は回復するであろう」(同p22)とつる草退治への心強いメッセージが書き残されています。

2022年から始めた「つる草抜き」も、昔から行われていた「草刈り、草取り」の伝統的手法を取り入れたもので、直接時には、高槻公害問題研究会の「つる草抜き」が「とても大きな成果を上げ、継続すればヨシ原は回復する」という実績を踏まえての取り組みです。

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2022年4月10日 400名余りで「つる草抜き」主催 雅楽協議会

(つづく)

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[2]「つる草抜き」2024年 日程

次回は6月3日から第5クールになります。ご参加をお待ちしています。

第5クール 6月3(月) /4(火) /5(水)  ※1
第6クール 6月22(土) /23(日) /24(月) (夏時間) ※2
第7クール 7月8(月) /9(火) /10(水) (夏時間) ※2
第8クール 7月22(月) /23(火) (夏時間) ※2
第9クール 8月3(土) /4(日) (夏時間) ※2
第10クール 8月20(火)/ 8/21(水)   (夏時間) ※2

※1の 第1クールから第5クールは、9時から午後4時です。
※2の 第6クールから第10クールは、夏時間8時から11時です。トイレは使用できません。
※雨天の場合は中止です。また天気予報で、「雨の予報」の場合、中止になる可能性が高いです。
「中止」の場合はこの『ヨシ原通信』などでお知らせします。

●「つる草抜き」は朝9時から夕方4時までですが、受付専用の事務員がいるわけではありませんので、ボランティアの方の受付は、基本的に9時と1時とになります。ご了承ください。
(問合せ先は 090-1538-1693 雅楽協議会・鈴木となります)
●持物 鎌などはありますが、手袋(軍手)や帽子、飲み物・食べ物などは持参ください。
●ボランティア保険(障害保険 ケガや熱中症)に今年も入っています。氏名の記載をお願いしています。 保険料はこれまで同様に雅楽協議会が支払います。
●トイレはNEXCO西日本の工事場の男女別のトイレを今年も借用します。
(6月中旬からは、台風などの影響を避けるため工事関連は全て撤去されますので、トイレも無くなります)

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[3] つる草抜き 活動記録 『篳篥用ヨシの再生へ ~上牧・鵜殿ヨシ原~』冊子発行

「つる草抜き」は3年目になります。なぜ篳篥用ヨシが悪くなっていったのかなど疑問に思うこと、つる草抜きの意義や活動などを記録しました。
鈴木治夫 著 発行: 2024年3月 雅楽協議会 サイズ:A4 頁数:54頁 定価 1,100円(税込)
問合せ・購入 https://musashino-gakki.com/product/?p=100701 武蔵野楽器 ℡03-5902-7281
上記アドレスより申し込めます。

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[4] 篳篥の蘆舌用ヨシの購入について

「つる草抜き」エリアの篳篥蘆舌用のヨシを購入希望の方は下記へご連絡ください。
連絡先・問合せ先 メールアドレス
kimura7633@gmail.com (上牧実行組合 木村和男氏)

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[5] 寄付のお願い

篳篥用ヨシ再生(つる草抜き)への寄付振込先

●郵便局は
郵便振込用紙に「ヨシへ寄付」と記入頂き
[口座番号]00140‐5‐614032
[加入者名]雅楽協議会

●銀行は
三井住友銀行 田無支店
普通 4012320
雅楽協議会 鈴木治夫

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[6]『ヨシ原通信』バックナンバー

『ヨシ原通信』バックナンバー 検索 (各アドレス(青ローマ字)をCtrlを押しながらクリック)

№1~№130 (2022年2月10日) ~(2022年12月31日)
http://gagaku-kyougikai.com/?p=684

№131~№269 (2023年1月8日)~(2023年12月13日)
http://gagaku-kyougikai.com/?p=2139

№270~最新号 (2024年1月11日)~
http://gagaku-kyougikai.com/?p=3875

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[7] 問合せ先・連絡先

メール gagakudayori@yahoo.co.jp
℡042-451-8898 ℡090-1538-1693
雅楽協議会 http://gagaku-kyougikai.com

発行 雅楽協議会 ヨシ対策室 担当 鈴木治夫

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