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『ヨシ原通信』No.365 2025年10月30日(木)
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[1] ヨシ原 篳篥用ヨシ 航空写真
2025年10月
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[1] ヨシ原 篳篥用ヨシ 航空写真(写真提供 NEXCO西日本)
篳篥用ヨシが育っているのは「つる草抜き区域」のみとなってしまった。
下の写真は2025年10月、つる草抜き区域を含む航空写真です。(写真提供NEXCO西日本)
つる草抜きの区域(約7000㎡)は黄色枠線内の刈込している内側の区域です。
ヨシの穂がこげ茶色になるので、上から見るとこげ茶色に見えます。
区域外のこげ茶色は、オオブタクサです。
緑色はつる草(ヤブガラシ、カナムグラなど)です。篳篥用ヨシが育っているのは区域内(黄色枠内)のみとなってしまいました。
(つる草抜きの区域は、ヨシ原全体の1%にもなりません。下流の「切り下げ地」にヨシは生えていますが、水域のヨシで細く柔らかいので篳篥用には使用できません。「調査区」に少しヨシは生えていますが、全部合わせてもヨシの本数は少ない。)

2025年10月のヨシ原の航空写真 (写真提供 NEXCO西日本)
陸域のヨシが育っているのは、黄色枠内だけになってしまい本当に愕然とします。
写真1(航空写真内の写真番号の場所より矢印の方向を撮影 以下同じ)

(上写真1 撮影2025年10月7日)
管理道路より山側を撮影。左上は建設が進む高速道路の山へ続く橋脚。右上の白い塔は、ヨシの新芽「葦牙(あしかび)」を模した淀川を監視する監視塔。見える範囲にヨシは全く生えていない。緑色のつる草に覆われている。

写真2 つる草抜き区域(新上流)の一番上流側の端。区域の中にもオオブタクサやつる草が生い茂りヨシを押し倒している。区域の周りは刈込がしてある。2025年9月12日撮影。

写真3 区域の堤防側より区域外を撮影。2025年9月12日。
区域の境目は刈込がしてあるが、左側(区域外)はつる草が群生し、橋脚工事の手前右に見える高く育っているのはオオブタクサ。ヨシは生えていないのが分かる。

写真4 左側はつる草抜き区域なのでヨシが群生している。右側はクズなどのつる草が生え淀川に続く。奥に高速道路の工事中の橋脚が建てられている。篳篥用ヨシは約7000㎡の範囲だけとなった。(2025年10月7日撮影)

写真5 写真3より下流から区域外を眺める。区域外のヨシ原は全面をつる草などに覆われている。区域外ではヨシを見つけるのも困難となり暗澹たる気持ちとなる。もし2022年に手を付けていなければ平安時代から続く上牧・鵜殿ヨシ原の篳篥用ヨシは守れなかった。篳篥用ヨシの再生に間に合ったとの気持ちが交差する。

写真6 下流区域と新下流の間、区域内の通路。手入れしてあるので両側にヨシが林立する。
2025年9月12日撮影

写真7 航空写真の左下から高速道路橋脚に向けて撮影。この角度からでもヨシは見つけられない、背の高いのはオオブタクサ。2025年10月7日撮影。
つる草抜きは2022年から
2021年に「全滅」の知らせを受け、2022年から今年2025年まで2500名以上の多くのボランティア・アルバイトの方々、寄付を寄せていただいた多くの個人・団体の方々、2年に渡り助成していただきました一般社団法人アクト・ビヨンド・トラスト及び第2回SDGs岩佐賞芸術の部の受賞など多くの個人・団体のご協力により「つる草抜き」を継続して行い篳篥用ヨシの再生を成し遂げることが出来ました。
しかし民間のみでこれ以上の継続は難しく、昨年2024年9月5日、東儀秀樹氏と私で都倉俊一文化庁長官に面会し現状を訴え、長官から直接「篳篥用ヨシ再生へ助成する」と返事を頂きました。
もし2022年からつる草抜きを始めていなければ平安時代から使用されてきた篳篥用のヨシは壊滅していたと思うと愕然とします。今後は国などからの支援も受けて、新しい体制で篳篥用ヨシの再生・保存を後世にいつまでも伝え続けられることを願っています。

東儀秀樹氏と私で都倉俊一文化庁長官に面会し、長官から「篳篥用ヨシ再生へ助成する」と返事を頂いた。写真右から東儀秀樹氏、都倉俊一文化庁長官、鈴木治夫 (2024年9月5日、文化庁にて)
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発行 雅楽協議会 ヨシ対策室 担当 鈴木治夫

篳篥を吹く源博雅
岡野玲子さんの御好意により使用させていただいています
(岡野玲子著『陰陽師 玉手匣 2』より)ⓒReiko Okano